アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
13 王子様4
-
学校は嫌いだった。
同年代の友達とは気が合わなかったのだ。
終業のチャイムが鳴り、帰宅の時間になるとすぐに教室を出る。
「おい!圭。遊んでけよ」
クラスの中心になっている、いわゆるガキ大将の藤野に声をかけられたが、首を横に振る。
「今日はちょっと」
「今日はって……お前、いつもじゃん。もう仲間に入れてやんねーぞ」
それはそれで、結構なことだ。
関口はランドセルを背負って教室を後にした。
彼が出た教室では、藤野の声が響いている。
時折起きる笑い。
きっと自分のことをネタにして笑いをとっているに違いなかった。
合わないのだ。
同年代の子たちとは。
話が。
帰り道を急ぎ、自宅に帰ると家政婦が待っていた。
彼女は、彼におやつを出してくれると言う。
だけどそんなものはいらない。
さっさと自分の部屋に入って、ヴァイオリンを取り出す。
これに触れた瞬間。
彼の心に安寧がもたらされた。
安心するのだ。
ヴァイオリンを持っているときが一番安心する。
友達と遊ぶのはつまらないことではない。
だけど、それは一時の楽しみではないか?
そんな無駄なことに自分の時間を費やすなんてばかげていると思った。
だったら、ヴァイオリンを練習していたほうがいいのだ。
早くお父さんみたいになりたい。
早くお母さんみたいになりたい。
早く上手くなって、大人に認めてもらうのだ。
難易度の高い曲ばかりを選んでコンクールを総なめにしていたあの頃。
あの時のコンクールもいつもと一緒だった。
また自分が一番になるに違いない。
そう確信していた。
ヴァイオリンを習っていた柴田には早すぎると言われていた曲を選んだ。
自分には楽勝だ。
この曲は大人のヴァイオリニストですら難しいといわれている。
だけど、関口のスキルでは難なく弾きこなせた。
難易度の高い曲で差をつけ、圧倒的な力で優勝を勝ち取る。
これが関口圭のやり方だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
76 / 869