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15 過去2
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火曜日。
コンクールから二日たち、蒼の体調は80%くらいは戻ってきただろうか。
今日から彼は、仕事に復帰する。
あの夜。
結局、泣き疲れて眠ってしまった蒼。
あれから。
関口は、なにも言えなくなってしまっていた。
拒否されたわけではないのか?
蒼の気持ちが、全く分からなくなってしまった。
好きでもない。
嫌いでもないと言うところなのだろうか?
蒼が答えを出してくれるまで、待つしかないのか?
しかし、あれ以来、その話題に触れることはお互い避けてしまっていた。
蒼が、あんなに困ってしまうとは思ってもみなかったから。
自分の気持ちばかり優先してしまったと反省した。
だけど、いつまで待てばいいのか。
どうしたらいいのか。
関口は、少し焦りが出ていた。
寝たフリをして、こっそり蒼の様子を見る。
彼は、まだ泣いているのか。
もたもたと用意をしていた蒼。
もしかしたら、自分は彼のことをもっと知る必要があるのではないかと思う。
彼がどういう生活をしてきたのか?
それを知らないことには、答えは出ない気がする。
答えを出しあぐねている原因は、蒼の中にあるのではないか?
そう思ったのだ。
「関口?」
どきっとする。
こっそり盗み見をしていたことを知られたのか?
しかし、そうではないらしい。
彼は準備を終え、仕事に向かうために自分に声をかけたようだった。
はっとして目を閉じた。
なんだかさっきまで泣いていたし。
なんて言って良いのか分からない。
焦ってしまった。
「関口?仕事に行ってくるね」
蒼は、関口の肩に手を当てて揺する。
関口は、頑として目を開けることが出来ない。
まだなんと声を掛けるか迷っているのだ。
すると諦めたのか、関口を揺することを辞めた。
「いい加減に起きなよ。んじゃね」
「あ!待って!蒼!」
ビックリして起き上がる。
「は……っ!」
一人で慌てている関口はバカみたいだ。
蒼は、大きな瞳をまんまるにして関口を見ていた。
「どうしたの?関口?」
関口は、眼鏡を掛けて彼を見つめる。
彼は普通だった。
さっきまで泣いていたとは到底思えなかった。
気のせいだろうか?
じっくり見つめてみると、関係ない事だが……彼は髪が伸びていることに気が付いた。
そうか。
だからますます可愛いのか。
不謹慎だとは思いつつも、表情は緩んでしまう。
蒼は、不思議そうにしていた。
「関口?気持ち悪いんだけど……」
指摘されてはっとした。
「い、いや……」
「変なの~」
「お前病み上がりだしさ……」
さっきのあれはなんだったんだろうか。
やっぱり気のせいか。
「無理すんなよ」
自分にも言い聞かせるように関口は頷く。
なんだか胸騒ぎがした。
あの涙はなんだ?
相手は、誰なんだよ。
「うん。ありがとう。頑張る!」
にっこり笑って仕事に出て行く蒼。
いつもと変りがなかった。
取り残された関口は、ぼんやり玄関を眺めた。
「おれはお前のことをなにも知らないんだよな」
もう二ヶ月も一緒にいるのに。
家族はいるのだろうか?
どこの出身なのだろうか?
一回も遊びに行ったりしたことがないけど、友達はいるのだろうか?
恋人は?
好きな人は?
そうだ。
自分は彼に恋人がいないものだと思っていた。
好きな人だって。
本当はどうなのだろう……。
蒼。
彼のことをなにも知らないのに、土足で踏み入るようなことをしてしまっていた自分に反省する。
蒼のことが知りたい。
蒼の全てを。
そう思った。
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