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15 過去3
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「蒼のこと……?」
関口は昼時、星野を近所の喫茶店「ソラマメ」に呼び出していた。
ここは、星音堂のまん前だ。
星音堂がある辺りは住宅が多いが、総合病院などがあるせいで少しばっかり店が出ているのだ。
小さな店舗が複合で入っている建物。
二階建てのそれは、こじんまりしたものだ。
一階には薬局と花屋。
二階が喫茶店だ。
その隣には中華のレストランがある。
お話程度だと、喫茶店のほうが無難だろう。
メールを入れると、星野はすぐに出てきた。
コーヒーを目の前にして彼は煙草を取り出す。
まだまだ喫煙席が残っているから、貴重な喫茶店だ。
「本人に直接、聞きゃいいじゃねえか。一緒に住んでいるんだろ?」
星野は、ランチをもぐもぐと食べている。
さっき、星音堂でカップラーメンを食べたと言っていたのに。
関口のおごりと知ったとたんこれだ。
ちゃっかりしている。
「それが聞きにくいから、星野さんに聞いているんじゃないですか」
人のお金でランチをしているのだから、少しは協力してもらいたいものだ。
関口は、苛立つ。
「ははん。人に恩を売って、情報を引き出そうって魂胆だったんだな。お前がおごるなんて、初めてのことだもんな。コンクールで羽振りがよくなったのかと思ったけど、裏があったわけだ」
「ぐ……」
星野は、面白そうに笑っている。
「まあ、いいだろう。そういう考え方は嫌いじゃねえ」
彼は、豪快に笑った。
見返りを求める親切は、星野の十八番だ。
彼は、ピラフをほおばりながら話し始める。
「やつは市内出身だ。たぶん、市役所側にある病院が実家じゃねえか?熊谷医院ってあんだろ?父親が医者だとかって聞いたことがある。高校はそこの梅沢。おれの後輩だ」
「星野さんの情報はいらないんですけど」
「ちぇ」
星野は、膨れた。
「梅沢を出て、隣の県の海原大学卒業。その足で市役所に就職。新規採用の時点で星音堂に配属されたってところだな」
大体のことは以前、蒼から聞いた気がする。
市内出身で……。
北町と言ったらここから通勤できる距離だ。
「市内に家があるのに、なんで一人暮らしなんか……。しかも昔からですよねえ」
大人の男だ。
一人暮らしをするのは、不思議ではないが、どうも腑に落ちなかった。
「さあな~」
星野は、もぐもぐしたまま続ける。
「ただ……」
「ただ?」
なにかあるのだろうか?
関口は、どんな話が待っているのかどきどきする。
「あ、おれ、パフェ食ってもいい?」
イラっとする。
そんなのはどうでもいい!
「……どうぞ!」
むかむかしながら星野を見る。
彼は、ウェイトレスの女性を呼んで追加注文をした。
それから関口を見た。
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