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15 過去4
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「たぶん兄弟なんだろうな。たまに若い兄ちゃんが星音堂に来るんだ。蒼いるかって。変だろう?普通、兄弟だったら、プライベートで逢うのが筋だ。それが、わざわざ勤務先に顔を出すんだから」
確かに変だ。
わざわざ職場に来る理由は……。
「おれは、こう睨んでいる。蒼が逢いたがらないんじゃないかって。職場に押しかけてしまえば、蒼だって無碍には断れないからな。相手は、そう踏んでるんじゃないかってね」
「必ず逢える……」
「自宅だったら、居留守つかったりも出来るだろう?出なきゃいいんだから。だけど、ここにこられたら逃げられないもんな」
なにか都合が悪いのだろうか?
「半分以上は、おれの憶測だ。鵜呑みにするなよ」
星野は、目の前に運ばれてきたパフェを美味しそうに食べる。
「あいつは明るいように見えて、いろいろ複雑ななんかを抱えているんだと思うよ。おれは。そんなに深いプライベートな話まではしたことがないけど。おれは感じる。あいつの中には、底なしの闇があるんじゃないかって」
「底なしの闇……」
それは、関口も感じていることだ。
お日様みたいにぽかぽかしているかと思うと、しょんぼり翳ってしまうときもある。
物事を深く考えすぎてしまうところもあるし。
なにかを抱えているのは確かだ。
だからこうして、調べまわっているのだから。
「お。こんな時間だ」
いつの間にかぺろっと平らげてしまい、満足そうにしている星野。
「は!すみませんでした。お昼中なのに……」
関口は、頭を下げる。
「なあ関口。あいつの素性やら生きてきた軌跡は知らんが、お人よしのバカには、違いないんだ」
彼は笑う。
「たぶん、あいつも、今まで十分孤独を味わってきてんだと思うよ。そういうお前だって、愛情があっても孤独だっただろ?」
図星だ。
「お前は、人に愛情を与える術を知っているんだ。だから、あいつを幸せにしてやってくれないか?」
「星野さん……」
「あいつ。拒否するかもしれないけど、それって愛情に飢えている子どもの反応だと思わないか?」
「愛情に飢えいてる……子ども?」
そうかもしれない。
自分もそうだったから。
愛情が欲しいくせに。
誰かが与えてくれようとすると怖くなる。
これをもらってしまっていいだろか?
もらってしまったら……後は?
慣れないから怖いのだ。
「星野さん……」
「本当は欲しいんだと思うよ。蒼も」
「……」
黙りこんでしまう関口を見て、星野は苦笑した。
「ま。何事も粘りが大切だぞ。本当に手に入れたいものは、時間がかかるものだ」
一体……。
星野は、どこまで二人のことを知っているのだろうか……。
手を振りながら満足そうに消えていく星野。
「恐るべし……」
蒼が家族とうまく行っていないなんて。
確かに頷ける事実である。
同じ市内にいて連絡もないし。
交流がないのは不自然か。
目の前にあるコーヒーをみつめる。
ため息を吐き、ふと外を見ると、目の前の星音堂から蒼が出てきた。
星音堂の周りは木に覆われているから、きっとあっちからは見えていないだろう。
それでも息を潜めてしまう。
もう昼食の時間は過ぎているのに……。
蒼は困った顔をしていた。
そして、彼の目の前には、長身で髪を短く刈り上げている男が立っていた。
あの男が……?
蒼の兄弟なのか?
なんだか全然似ていない。
「なんだ……?」
男は、なにやら蒼に訴えている。
しかし、彼は首を横に振るばっかりだった。
なんなんだ?
関口は、むっとして男と蒼を見詰めた。
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