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15 過去8
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目の前には、大きな点滴がぶら下がっていた。
「蒼」
ぼんやりしていた。
今日は、首にまで包帯が巻かれていて苦しかった。
「……蒼」
目の前で手を握って付き添ってくれていたのは、栄一郎。
お父さん。
泣いているみたいだった。
この人もまた、悲しかったのだろう。
「よかった……。気が付いて。本当によかった……」
なんだろう。
何が起こったのか、まったくわからなかった。
ただ。
空にナイフで切りつけられたってこと。
その後、彼女も自殺を図り、病院に搬送されたと言っていた。
空は、精神病院に連れて行かれてしまった。
それっきり。
彼女とは、会っていない。
あれから何年も経つのに。
彼女は、まだ帰ってこなかった。
あんなことがあっても、蒼には彼女が悪いとは思えなかった。
あの人は、悪くないのだ。
優しかった空が、あんなになってしまうなんて……。
全ての元凶はあの家だ。
熊谷と言う家。
熊谷病院と言う建物。
大学まで出してもらった恩はあるけれど。
もう、戻りたくはなかった。
あの忌々しい家には。
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