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16 待たなくていい7
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ふらふらする足取りを助けるために肩を貸す。
よたよたと階段を上り、やっとの思いで部屋に入れるが、彼は笑顔で喋り続けていた。
その声はいつもよりも大きく、静かな室内に響いていた。
「関口ちゃんって!」
「おい!何時だと思ってんだよ。静かに!蒼」
「あはははは~!」
埒が明かない。
関口は、ふらふら徘徊している蒼を後ろから掴まえてベッドに引き戻す。
そして、蒼の口を塞ぎ、そっと静かな口調で語りかける。
「もがもが!」
「落ち着いて。蒼。落ち着いて」
低い関口の声が耳元で聞こえる。
最初は暴れていた蒼も静かになった。
「おれの声聞いて。蒼」
蒼は深く息を吐く。
少し落ち着いたらしい。
酔っ払っているせいで瞳が潤んでいた。
ぼんやりしているそれは、関口からしたらそそられるものだ。
「関口」
「聞こえる?」
「うん……」
どきどきした。
蒼の心臓の音が側で響いている。
関口は、抑えきれない衝動にめまいがした。
「おれ。幸せだよ……。関口がいてくれて」
「蒼……?」
急になにを言い出す、とばかりにビックリして蒼を覗き込んだ。
彼は、むふふ~と笑っている。
「よーし!幸せなところでいっぱつ!飲みますか!」
始まってしまった。
「こら!」
関口は、呆れて蒼を見詰める。
立ち上がったはいいが、ふらふらしている。
「酒~♪酒~♪酒は飲んでも呑まれるな~♪」
十分に呑まれている。
思わず苦笑してしまった。
酒を求めてキッチンへ行き、冷蔵庫に思いっきり衝突している。
「あでっ!」
「よたってるし……」
ふらふらと時間をかけて、戻ってきた彼の手には、コップが二つあった。
「おれも飲めってこと……?」
「当たり前でしょう?一人で飲んだって詰まらないもの」
黙っている関口に日本酒を注いで差し出す。
「はい!」
はいって。
これは付き合わないと納得しないみたいだ。
関口はそれを受け取る。
「はい!乾杯!!」
勝手に乾杯をしてにこにこ笑う蒼。
本当にこいつは……。
無邪気に楽しんでいる彼を見るとほっとしてしまった。
蒼はぐびぐびと酒をあおった。
「うめ~!」
「おいおい。日本酒はちょびちょび飲むのがおいしいだろう」
「そんなことあっかよ~!」
ぶっと膨れる蒼。
からかうと面白い。
呂律が回らないのに一生懸命話している。
「しけたつらすんなよな~!」
「はいはい」
「もっと、楽しく!お酒は楽しく!」
ちらっと時計を見ると、3時過ぎたところだった。
さっきまで寝ていたとは言え、眠くなってくる時間だ。
蒼も自分で言っているように疲れやすいのだろう。
スタミナがなくなってきたらしい。
目が半分だ。
とろんとしていた。
「蒼。やめにしようか」
「え!?」
関口は、蒼の手からコップを取り上げる。
「あ~!関口!」
たまには飲みも付き合ってあげないといけないな。
こんなに爆発するくらい鬱憤が溜まられたら大変なことになってしまう。
「生意気だぞ!年下の癖に~!」
抗議の言葉には耳を貸さず、関口はさっさとキッチンに向かう。
グラスを洗って戻ってくると、蒼はやけを起こして部屋の真ん中でごろんと寝てしまっていた。
「ね~む~い~……。関口のばか~……」
ぐだぐだしている蒼。
酒臭い。
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