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18 マエストロ7
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楽屋はステージから少し奥の個室だった。
広い練習室。
ここを一人で貸しきっているのかと思うとさすがだと思う。
ノックをして顔を出すと、彼は日本酒を片手にすっかり寛いでいた。
「父さん……」
関口は呆れる。
「圭!おや。蒼も来てくれたんだね!父さん、嬉しいよ~!」
燕尾服のタイを緩め、軽く汗をかいているのだからさっきまで指揮をしていた圭一郎はこの人なんだろうけど。
あまりの豹変ぶりに蒼も瞬きをしていた。
同一人物なのか疑わしい。
控え室の奥からはかおりも顔を出した。
「圭に蒼ちゃん。どうだった~?お父さんの演奏は?」
「す、素敵でした!!」
蒼は興奮して瞳を輝かせる。
「そっか~。蒼の心には響いたか。嬉しいね」
関口は感激している蒼を引き寄せて抱き締めようとする父親を止めに入る。
「おい!こら!!客だぞ!!」
「客??」
圭一郎とかおりは顔を見合わせる。
関口は扉を開けて蒼の両親を招きいれた。
「栄一郎じゃないか!」
「久しぶりだな」
恥ずかしそうに立っている彼に、圭一郎は飛びつく。
「うれしいぞ~!」
外国生活が長いせいか、彼のリアクションは大きい。
そして、栄一郎にまでハグをする。
「おいおい。ここは日本だぞ?」
「いいじゃないか!お前はおれの親友だ。ん?空さん?」
懐かしい親友との再会を果たして上機嫌の圭一郎は静かにたたずんでいる空を見つける。
かおりも嬉しそうに彼女に駆け寄った。
「空ちゃんじゃないの!お久しぶりね」
「かおりちゃん……」
両親同士の再会に、蒼と関口はぽかんとしていた。
こんなに親密だったとは。
もしかしたら二人は出会うべくして出会ったのではないかと疑問がよぎった。
「……蒼。おれたちはいくか」
「そうだね」
きゃぴきゃぴしている4人は放置だ。
二人はそっと控え室から出ようとした。
「よし!せっかくだ。これから食事でもしようではないか!さあ、そこの若い子たちも一緒においで!!」
急に圭一郎の声が掛かる。
どきっとした。
「いや。おれたちはいい」
関口は引きつった笑みを浮かべて、首を横に振る。
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