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22 不穏な出会い3
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そんなのは自分で分かっていること。
苛立って思わず声が大きくなってしまう。
「してるって!」
はっとしたときはもう遅い。
挨拶をしていた貝塚が「関口!」と視線で嗜めた。
「す、すみません……」
おずおずと首を竦めてから宮内を見る。
「おれはあいつを信じている。それは確かだ。今回だって、おれが手伝えることなんて、とってもちっぽけなことだと分かっている。だけど……見ているだけで構わないんだ。あいつの側で、あいつがどうして行くのか、見守りたいんだ」
宮内は苦笑した。
人がせっかく真面目に話していると言うのに。
「おい」
「お前、本気なんだなあ」
「当たり前だろう。この前からそう言ってるじゃないか」
笑われてしまって恥ずかしい。
蒼のことになると、後先構わずに突っ走ってしまうのが悪い癖だ。
自重しないと。
関口は反省した。
「見てみたいなあ。ナマ蒼」
「なんだか嫌な表現だなあ……」
「だってさ。お前がそんなにのめり込むんだ。見てみたいじゃないか。友人代表としてはね」
「勝手に代表になるなよ~」
二人が話し込んでいる間に一通りのミーティングが終わったようだ。
貝塚が解散の声を掛ける。
早く解放されたかったのだろう。
団員たちはそそくさとステージを降りていく。
「なあ。蒼の写真持ってきたって言ってたよな?見せろよ」
「え~!なんで宮内に?この前だって見せたじゃん」
「いいだろ?けちけちすんなって。それに携帯のではよく分からないだろう?」
そんなことはない。
携帯の蒼だって十分に可愛いんだから……。
そういいかけて黙る。
「ほれ!見せろ、見せろ。減るもんじゃね~だろ?」
昔から彼の押しには弱い。
しぶしぶ写真を取り出した。
海外に行くのに、お守りにすると言って、無理矢理、蒼から奪ってきた写真。
浅黄色の着物に身を包んで微笑んでいる蒼。
これは去年の星音堂文化祭のときのものらしい。
真っ黒な蒼の髪と瞳。
着物の色はしっくりきていた。
「なんだか、写メとは感じが違うなあ……」
宮内は写真を食い入るように眺める。
「あっちは子どもっぽい感じがしたけど。こうしてみると美人系?」
「やめろ~!そんなにじろじろ見るな!なんだか蒼の可愛さが減る気がする」
「なんだそりゃ?」
宮内は関口に写真を返し、立ち上がる。
周囲にはもう誰もいない。
「ほれ!飯だ飯。行こうぜ~!ビール!」
クールな容貌をしている宮内。
しかし、彼は妙に親父くさいところがある。
これがたたっているのか?
女運には恵まれない。
今回も「日本の女がだめなら、ドイツの女の子を捕まえてやる」と意気込んでいる始末だ。
彼女が出来ないのは容姿とは間逆のオヤジくささとこの変にずれた性格のせいだと関口は睨んでいる。
大きくため息を吐いてから写真に視線を落とす。
『大丈夫だよ。関口』
微笑んでいる蒼は、そう言っているようにも見えた。
蒼。
辛いときに側にいてあげられなくてごめん。
「蒼……」
じ~んと物思いにふけっていると宮内に腕を引っ張られた。
「ほらって!」
「あわわ!待ってって!」
「早く行こうぜ~!」
まだまだ蒼とのことに思いを馳せたい関口だったが、強引な宮内に引っ張られて、夜の町に連れ出されていった。
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