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23 すれ違い11
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「ただいま!」
関口は慌てて帰った。
時間は1時になったところだ。
「蒼?」
部屋の中は暗い。
もう寝てしまっているのだろう。
「……」
ヴァイオリンを床にそっと置いて、室内に入る。
暗い中に蒼の呼吸が聞こえた。
「?」
電気をつける。
彼は眠っているようだが、呼吸が苦しいのか、何度も寝返りを打っていた。
「蒼?」
思わず蒼の肩をゆする。
「ん?関口……?お帰り」
咳をして起き上がる。
「苦しいのか?」
「なんだろう。薬、最近さぼってたからかなあ……」
関口が海外に行っている間。
蒼は精神的にも不安定だった。
服薬をするまで気が回らなかったんだろう。
「ごめんな。今日は」
「ううん。なんで謝るんだよ。友達と食事なんていいことじゃない。よかったね。関口」
棚から薬を取って蒼に渡す。
「蒼……」
「ごめんね。おれのほうこそ。疲れて帰ってきているのに……。もう平気だよ」
笑おうとするが、息苦しさで顔が引きつる。
顔が強張ってしまった。
「蒼」
引きつった蒼の笑顔が余計痛々しい。
「もう、こんなことしないからね」
「関口?」
ぎゅっと蒼を抱きしめる。
一瞬でも安岐にどきどきしていた自分が恥ずかしい。
「季節の変わり目だから……。平気なんだよ……」
蒼は安心したのか。
関口の腕の中に納まって目を閉じる。
「寝ようね。蒼」
「うん……」
やっぱり、彼を一人にするのは心配だ。
一緒についていてあげないと。
関口はそう思った。
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