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25 小舅vs恋人4
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「ずっと空の後ろにくっついて離れない子だったよ。だんだん、慣れてはきたけど。いつまでたってもおれに対しては気を使っていたみたいだ」
「そうだったんですか?」
「どこで覚えたのだろうね。子どもなのに。気を使うなんてこと。母親と二人だったから、気を使う機会なんてなかったと思うんだけど」
「そうですね」
栄一郎は楽しそうだ。
「そうそう。蒼はいい成績をとると隠すクセがあったのだよ」
「へ?悪いのじゃなくてですか?」
「そうそう」
蒼の昔の話なんて。
関口は、うきうきする。
「なんだか、通信簿とかまったく見せない時があってね。空もいなかったから、無理に見せなさいなんて怒ったら可哀想かなっても思ったのだけど。やっぱり、なんで見せないのかが気になってね。蒼を問い詰めた時があったのだ。あれは、小学校の低学年の頃かな?そしたら。泣きながら通信簿を出してきて。見たら、なに。体育以外は全部、優だったのだ」
体育以外?
蒼は確かにとろい。
昔から苦手なのだろう。
思わず苦笑する。
「なんで見せないのかって聞いたら。褒められたくないって答えたんだよ」
「褒められたくない?」
「そう。蒼は怒ってもらいたかったみたいなのだ」
「……」
「確かに。それまで、おれは蒼のことは空の子どもだって感覚で接していたのかもしれなかった。自分の子どもではなくて。だから、無意識に、怒るってことをしていなかったみたいなのだ。自分ではそんなつもりはなかったのだけどね。それを蒼は敏感に感じていたみたい。だから、褒められるよりも怒られたかった」
思わずキッチンのほうに視線を向ける。
向こうからは朗らかに笑う空の声と楽しそうにしている蒼の声が響いてくる。
「それからはちゃんと怒ることにしているのだ。蒼を特別にしないで。他の子どもと一緒にしようって決めたよ。どうしてもね。空から預かった子なのだから、大切にしなくちゃって思ってしまうのは仕方ないのだろうけどねえ」
「関口、運んでいいよ」
キッチンから顔を出す蒼は、二人の様子に首を傾げる。
「な、なに?」
「いや。さあ、運ぼう」
栄一郎は苦笑して関口の肩に手を載せる。
「今のは秘密ね」
「は、はい!」
「なんの話?」
二人の様子は怪しい。
蒼は瞳を細める。
「関口、なんの話?」
「いや。別に」
「な!」
秘密にする気!?と蒼は彼を睨む。
「気にしない。気にしない」
苦笑する栄一郎は、さっさと昼食の準備をした。
「気になる!」
ご機嫌斜めの蒼の背中をぽんぽんと叩いて、関口は笑う。
「そんなに気にしないで。後でちゃんと話すって」
「本当?」
「本当だって」
関口に促されて、蒼も昼食の用意に戻った。
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