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翌日。
夜も寝付かれなかったようで、蒼はいつまでも寝息を立てていた。
しかし、関口はさっさと起きだして、星音堂に出かける。
日曜日当番は星野と吉田だった。
関口が顔を出すと二人は、心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫か?あいつ」
「星野さん」
「なんとも。結構きてますね」
関口は蒼の机に座る。
「あんだけ絞られればな。しかもおれたちは素人だ。怒られ慣れてないし。そうそう言われたからってその場で直せるものじゃないからな」
「そうだよ~。おれたちはプロみたいに臨機応変に出来るまで、自分のものになっているわけじゃないんだっつ~の」
ぶうぶう文句を言う二人。
蒼が怒られていたことを自分のことのように思っているのだろう。
苦笑してしまう。
「なんとか大丈夫にさせてみます」
関口の言葉に星野は笑う。
「いい心がけだ!」
「関口って頼りになる男だったんだな。蒼のこと頼むぞ」
星野と吉田は顔を見合わせた。
「あの。それでお願いがあってきたのですが」
「なんだ?」
「あの。猫の着ぐるみを借りていってもいいですか?」
「もちろんだ!」
星野は笑う。
「蒼と練習をするのか?」
「そのつもりです。このままじゃあいつ、本当に本番のステージに立てない気がするから」
「そうだな」
星野が頷いている間に、吉田は倉庫に向かう。
そこにみんなの着ぐるみが保管してあるのだ。
今日は日曜日だから練習はお休みだけど、本番が今度の金曜日だから。
火曜日からは猛特訓だ。
みんなで合わせる機会が当日のリハーサルしか残っていないのも痛い。
関口も焦っていた。
本当に蒼を立ち直らせることができるだろうか?
吉田はせっせと着ぐるみを持ってくる。
持ってみると結構、重くてずっしりしていた。
こんなのを着て歌いながら飛び跳ねたりするのだから。
演じているほうは大変だなと思う。
「じゃあ、お借りします」
「はいよ」
関口は二人に見送られて事務室を出る。
顔の部分が大きいので、前がよく見えない。
玄関口のところまできてあたふたしてしまう。
取っ手が見つからないのだ。
「えっと」
手を伸ばして感覚で探っていると、不意に目の前のガラスの扉が開いた。
びっくりして視線を向けると、そこには高校生が立っていた。
「大丈夫ですか?」
人の良さそうな子だ。
「すみません」
「わあ、かわいい着ぐるみですね」
彼は人懐っこいのか。
初対面の関口に声をかけてきた。
なんだか自分が着るみたいに思われては困る。
関口は変に言い訳のような言葉を口走っていた。
「い、いや。これはちょっと借りるだけで。おれのではないから」
「そうなんですね」
ドアを大きく開いて、彼は関口を通してくれた。
「ありがとうございます」
「いえ。こちらこそ」
にこやかに中に姿を消す高校生。
珍しいものだ。
日曜日って言っても一人で来るようなところではない。
彼は事務所のほうに向かっていった。
何かの予約に来たのだろうか?
そんな疑問が浮かんで首を傾げながら関口は車に向かった。
まさか、その高校生が星野に会いにきたなんて思いもせずに……。
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