アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
43 年越し温泉旅行7
-
食事は案外時間がかかった。
4人も集まってわいわいすれば会話が弾んで食は進まない。
結局、夕食中に紅白が始まってしまった。
別に紅白を見なくちゃならないってことはないんだろうけど。
これを見ないと年越しできない!と蒼が強く言うものだからみんなまとめて見ることになった。
なにが悲しくて温泉に来てまでテレビを見なければならないのか。
関口はため息だ。
せっかく、非現実的な世界に来たんだからゆっくり温泉にでも入って、飲んで、普通では味わえない気分に浸りたかったのに。
これではアパートにいる時と変わりがない。
目の前でテレビにかじりついている蒼と油井。
それを楽しそうに見ている星野。
「は~」
関口のため息が聞こえたのか?
蒼は振り返る。
「どうしたの?関口」
「いや」
「なに?」
関口の言いたいことを理解しているのか?
星野はニヤニヤしていた。
「あ、見えない?ごめん!」
蒼は場所をどける。
「いや。そういうわけではないんだけど……」
「わかった!テレビ遠いんでしょう?」
違う……。
「こっちきなよ」
だから違うんだって。
「どうしたの?関口?」
全く話にならない。
関口はタオルを持って立ち上がる。
「おれ、風呂に行く」
「え??」
さっさと出て行く関口。
星野は黙って煙草をふかしていた。
「な、なんで?関口、紅白嫌いだったのかな?」
蒼はしゅんとした。
油井も心配そうに蒼を見ている。
「関口は嫌いじゃないと思うけど?」
「でも、じゃあなんで……」
星野は笑う。
「お前、ちっともあいつのこと見てあげてないじゃないか」
「!?」
関口のことを見ていない??
そうかな?
……。
そうかも。
そうかも知れない。
関口と二人で年越しって話しをしていたのに、結局は星野たちと一緒になって、全然違うものになっている。
ご飯を食べてから、自分は紅白に夢中だったし。
そうだったかもしれない。
蒼はじっと考えていたが自分も立ち上がる。
「お、おれも風呂に行ってきます!」
「素直でよろしい」
苦笑している星野の脇を抜けて、蒼も豪快に飛び出した。
「騒がしい奴だ」
「……でもいいですね」
油井は微笑む。
「なに?」
「仲いいって言うか」
「仲はいいんだが……どうもまだ意思疎通がうまく行かないみたいだな」
「難しいですよ」
油井の言葉に星野は笑う。
「おれはお前の気持ちなら一発で分かるんだけど?」
「え?」
「お前は単純だからな」
「ひど!」
抗議をする油井をぎゅっと引き寄せて星野は瞳を閉じる。
「やっぱ二人きりになる時間も必要だな」
「星野さん……」
最初は戸惑っていた油井だけど、そっと背中に腕を回す。
そのたどたどしい動きが嬉しくて、星野は更に笑った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
303 / 869