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48.過去との対峙5
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「その節はお世話になりました」
顔が強張った。
そんな様子をみて空は蒼の腕を掴んでくれる。
「大丈夫?具合悪い?」
「大丈夫」
「まあ、とにかく座ってください。手短にご説明しますから」
加賀は表情を曇らせて、それから3人に椅子を勧めた。
「先生にご説明するのは恐れ多いことですけど、とりあえず、主治医として説明しますね」
「いやいや。キミの腕はおれもわかっている。キミが担当になってくれて良かったよ」
蒼は「よくない。むしろ最悪だ」と思う。
「これを見てもらうと分かると思うんですけど、とにかく、異常は見当たりません。今のところ、頭部にも目立った出血なんかもありませんし。先ほどの診察でも外傷は見つけられませんでした。ただ、ショックが大きかったのか、一時、失声と歩行困難がみられましたので、とりあえず、今晩は大事をとって入院してもらうことにします。明日には退院できると思います」
「そうか」
ふむっと栄一郎は頷く。
「ですが、ご存知の通り、こういった場合、症状が後になって出てくる場合もありますので、十分に気をつけてもらって、何か異常があった場合はすぐに通院してもらうようにしてもらいたいです」
「分かりました」
蒼ではなく栄一郎のほうが大きく頷いた。
「蒼、関口くんがいない間は家にいたほうがいい。急に状態が悪化することだってあるんだから。一人は辞めたほうがいいよ」
「でも」
「そうだわ。関口くんもいないから心配だわ」
「……」
「明日、退院の時に迎えに来るから。一緒に帰ろう。たまには実家もいいと思うよ」
「……」
陽介のこともあるし、あんまり帰りたくはないのだが、仕方がないことだ。
蒼は渋々了承した。
「そっか。蒼くん。家を出ているんだ」
「お、おれだって大人ですから」
加賀に反論するように言葉を投げて俯く。
「蒼?」
不思議そうに首を傾げている栄一郎と空。
加賀は苦笑いをして言葉を続ける。
「蒼くん。疲れているんでしょう。今日は疲れたもんね。ゆっくり休むといいです」
視線をふっとそらして彼は笑う。
「じゃあ、とりあえず明日まで宜しく」
栄一郎は蒼の腕を掴み、立ち上がった。
「はい。お任せください」
いつまでも加賀の視線が痛い。
蒼は連れられるようにして談話室を後にした。
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