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49.熊谷家8
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兄弟って不思議なものだ。
血の繋がっていない兄弟でも、兄弟は兄弟。
それ以上、それ以下に見るってことはない。
今回の実家生活で蒼は十分に理解した。
陽介との話は有意義といえば有意義だったんだろう。
少し、蒼にしたらしっくりこないものもあったけど、結局は今回のことでお互いは兄弟意外の何者でもないってことが分かったから良かったのかも知れない。
翌日。
仕事に行こうと階下に下りると、両親がにこやかに迎えてくれた。
「おはよう。蒼」
「おはよう」
「ずいぶん、昨日は飲んでいたみたいだね」
「うん。久しぶりだもん」
椅子に座ると母親が朝食を持ってきてくれた。
たまにはいいのかも知れない。
こういう生活。
生まれて初めて?
父親がいて。
母親が朝食を作ってくれて。
そして。
「おはよう」
昨日の酒が残っているのか。
陽介は眠そうだ。
「おはよう」
兄弟がいて。
家族が揃っているってすごくいい。
初めて人並みな生活を実感できたのかもしれない。
今までは疎ましくて、自分の人生を狂わせた悪の根源だと思っていたこの家がちょっぴり好きになる。
こういうのもいいのかも。
ぼんやりしていると啓介も起きてくる。
「おはよ~!なんだ?蒼。ぼんやりしていて。遅刻しないの?」
「へ?」
時計を見る。
「やばい!」
連休明け。
早く出勤してやる仕事がたくさんあるのだ。
「行ってきます!」
「あら?食べないの?」
そんな場合じゃない!
蒼はがたがたとあわただしく玄関に走る。
「蒼~!お弁当」
空は蒼を追いかけて玄関まで出てくる。
そしてピンクのハンカチに包まれたお弁当を手渡してくれた。
「母さん。この色……」
「蒼に合うと思って」
息子にこういう色のお弁当を渡すか?
蒼は苦笑して母親を見る。
「行ってきます」
「今日も頑張ってね」
「はい」
にこやかな空を見て、蒼は気持ちも明るく、玄関から出て行った。
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