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52. ATTO TERZO1
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三次までの5日間はあっという間に過ぎた。
自分と共演してくれるメンバーと顔合わせをし、一緒に音楽を作る。
曲はヴィヴァルディ。
こういうときに、この作曲家がチョイスされるのは珍しいかもしれないけど、この曲は関口にしっくりくるのだ。
桜と一緒に選んだ曲だもの。
大丈夫だ。
メンバーはとてもいい人ばかりで熱心に関口のサポートをしてくれた。
その間に、マエストロ関口の息子なんて記事に書きたてられたけど、無視だ。
知らん振りすることにした。
新聞も、もう見ない。
桜やミハエルが大騒ぎをしていても知らん振りする。
練習時間が過ぎても一人で練習を続け、そして三次予選を迎えた。
いったん、仕事に戻っていたかおりも見に来ると言う話だったけど、関係ない。
自分は自分。
ここ5日、関口は音楽のことだけに集中していた。
周りからみたら大丈夫か?ってな話だけど。
だけど、彼自身にとったら本当に幸せなことだった。
音楽のことだけ考えてればいいだなんて。
至福のとき。
だけど、やっぱり思い出すのは蒼のこと。
当日。
コンサートホールに入る瞬間。
ふと蒼を思い出した。
「蒼……」
立ち止まって視線を頭上に向ける。
「もう少しだから。待っていてね」
ヴァイオリンケースを抱え、彼は深呼吸をして中に入った。
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