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69.別れ1
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「あんたどうする気なの?仕事、このまま辞めちゃうつもり?」
店を閉める手伝いをしている蒼に声をかける。
彼は一瞬、動きを止めた。
「でも、どうしたらいいのか」
結局。
あの後、お風呂に放り込まれて、それから食事をもらった。
まともな食事は久しぶりで思うように食べられなかった。
常連客も帰っていた深夜。
蒼はため息を吐く。
まずいことは重々承知だ。
仕事も無断欠勤だし。
圭にも合わせる顔がない。
「なにも普通に出勤すればいいじゃん」
桜は簡単に言うけど。
「お前ねえ。大変なんだよ?使われている身って言うのは」
野木がフォローしてくれるが、解決策は見付からない。
「めんどくさいね~。サラリーマンって言うのは」
「すみません……」
ドアを閉め、鍵をかけてからカウンターに座る。
「サラリーマン代表で謝罪されてもねえ」
桜は苦笑した。
「仕方ないねえ。あたしがなんとかしてやるか」
「え、桜さんが?」
「なんとかできるのかよ?」
「なんとかなるって。あいつとの付き合いは長いんだからさ」
深夜だと言うのに桜は携帯をかけ始める。
「おいおい。非常識だな」
野木は呆れて笑う。
「あ、もしもし?あたしよ。え?2時に決まってんでしょう?なに寝ぼけてんだよ」
どんな相手だって「何時だと思っているんだ」と文句を言うに決まっている。
その切り替えしがこれでは。
相手が可哀相になってしまった。
蒼はぼんやりと目の前に置かれているコップを見つめる。
まだまだ頭も回ってこないのだろう。
野木はため息を吐いてから蒼の腕を引っ張る。
「もう寝ろ。今日はどうにもしようがないだろう?」
「野木さん」
「ほれ。朝になってからまた考えようぜ」
「……」
促されるままに席を立つ。
自分がどうしたいのか。
どうしなくてはいけないのかすら考えられない状態だったし。
とりあえず、こうしていても仕方がないだろう。
久しぶりに布団の暖かさを知った蒼である。
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