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75.嫉妬4
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「なに言ってんの?三浦はただの生意気な後輩で……」
「そういう生意気な子が好きなんだろう?」
「はい!?」
蒼の話なんか全く意に介さず。
圭はどんどん一人で突っ走っていく。
「普通さ。後輩なら、ただの後輩じゃん。生意気とかつけなくない?蒼はお兄さんぶるのが好きだから。ああいう手のかかる子がお気に入りだもんね」
「ちょっと。どういうこと?それ」
「ああ言う、少し偉そうな蒼、初めて見た」
「悪かったね!偉そうって。だって、おれは三浦の教育係なんだし、少しきつく言わないと分からない子だから……」
「そういうのって言い訳にしか聞こえないんですけど」
言葉に詰まる。
蒼は頭の回転は速くない。
言い合いになると、いつもこうなる。
まごまごして視線を泳がせる。
次の言葉を探しているのだ。
それを確認して、圭は意地悪に続ける。
「手のかかる子のほうが好きなんでしょう?おれといるよりも楽しそうだったし」
「ち、違……」
「あの三浦ってヤツ。蒼のこと好きみたいだもん」
「そんなこと、ないよ!」
「蒼になにが分かるの?おれの方がよく分かる」
「……」
そんなことないのに。
自分が好きなのは圭だけなのに。
その気持ちを伝えたいのに言葉に出来ない。
なんだか悲しくなって涙が出た。
ぐずぐずしている蒼。
圭は少しやりすぎたと反省した。
だけど、蒼のことが好きだから。
嫉妬は倍増するものだと自分に言い聞かせる。
自分はそんなに悪くないはずだ。
蒼が、ああいう姿を自分に見せたことのほうが問題なのだ。
自分の意地悪を正当化させるために、そう思うしかない。
本当だったら、泣いてしまった蒼を放っておくなんて到底出来ない。
だけど、今日は蒼も悪いんだから、少しは反省してもらわないと。
そう思ったのだ。
しばらく黙っている。
蒼はいつまでもめそめそしていた。
その内に、車は自宅に到着する。
無言のまま、エンジンを停める。
「ごめん。蒼」
そっと蒼の膝に手を添える。
「ごめんって。蒼。ヤキモチ焼いて」
だけど、蒼は泣き止まない。
「蒼~……」
「ひ、ひどいよ。圭」
ぐしゅぐしゅしながら、蒼は泣いている。
「一生懸命に、仕事をしていただけだもん……。それなのに……」
「だから。ごめんって。三浦と蒼が仲良く仕事していたのが気に食わなかっただけ」
「ひどい……」
シートベルトを外して、そっと蒼を引き寄せる。
小さくなっている彼。
抱き締めてみると蒼の匂いがした。
ああ。
本当に好きなんだな。
そう思った。
自分も、色々あるから、気が散漫していると言うこともあるけど。
もし、これがそうではなかったら。
自分の意識が蒼にしか向いていなかったら。
かなり危険な気がした。
たぶん、束縛しまくりである。
彼の行動、一つ一つが気になるに違いない。
今がちょうどいいのだろう。
お互いにやることがあって。
お互いの世界が別にあって。
やっぱり、それでちょうどいいのだ。
24時間、一緒にいたらそういうわけには行かないのだろうし。
「ごめん。蒼。機嫌直して。おれが夕飯作るから」
「お、おれ」
「うん?」
蒼は顔を上げる。
「おれが好きなのは圭だけだもん。他の人なんて、本当にどうでもいいんだから……」
蒼の口からそう聞けただけで嬉しい。
「うん。おれも」
そっと蒼の頬に口付けをして、そして身体を起こす。
「けだもがお待ちかねだ」
「うん……」
しょんぼりしたままの蒼の手を引いて、圭は自宅に入る。
ちょっとやりすぎたと反省した夜であった。
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