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80.家政夫は見た!7
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『蒼!どうしたの~?おれに逢いに来てくれたのか?』
ショルティは嬉しそうに手を叩く。
しかし、蒼は無言。
そのまま、彼の手を掴むと、ずるずると店外に引きずり出した。
「室長も。ちょっといいですか?」
安齋は神妙な顔つきだ。
なんだか保住からしたら笑ってしまう。
「一体、何事なんだ?仕事は?」
「室長こそ……」
「おれは休みなの。いいじゃない」
「よくありませんから」
恐い顔だ。
首を竦めて、お会計をして外に出る。
店の前にはちょっとした憩いの場があった。
そこのベンチに座らされて、ショルは蒼からお説教をされている様子だった。
『どういうつもりなの?室長さんを連れ出すなんて!』
『だって~。保住がお休みして付き合ってくれるって言うから……』
ショルの目の前に仁王立ちになっている蒼は険しい表情を更に険しくする。
『そんな嘘ばっかり!あのねえ。そんな理由で室長さんがお休みを取るはずが……』
「そんな理由なんだが?」
蒼は言葉を切る。
そして顔を上げた。
安齋と連れ立って出てきた保住はおかしそうに立っていた。
「保住室長」
「大した理由でもない。深い理由でもない。ただ、その男に興味が湧いたから付き合ってみたまでなんだけどな」
「室長……」
安齋は信じられないと言う顔をしている。
仕事熱心な彼が。
そんな造作もない理由で仕事を休むなんて……。
「大したことがない理由でも、それでもどうにもできない時ってあるものだな」
「室長?」
一瞬、彼の言いたいことが分からない。
安齋は目を瞬かせた。
ショルは日本語の会話を分かっているのかどうなのか?
ふと蒼を見る。
『蒼。おれ、すっごくビックリしているけど、神様に感謝している』
「へ?」
『この人と出会えたのは素晴らしいことだと思うんだ』
『え!?えええええッ!??』
ど、どういうこと?
蒼はショルと保住を交互に見る。
やっぱり?
やっぱりの関係?
まさか?
どうして??
疑念ばかりが脳裏を過ぎる。
安齋も、予想はしていたものの、思考許容範囲から逸脱した事態に呆然と立ち尽くすばかりだ。
当てにならない。
慌てて、ショルを見る。
『ショル!だって、キミは恋人がたくさんいて……』
『そうなんだけど。もうどうでもいい』
『ちょ、ちょっと!!』
今度は慌てて保住の下に駆け寄る。
「室長!どうなっちゃっているんですか?本当なんですか?」
「おれに聞かれてもなあ。でもそういうことなんだと思う。まだ分からないんだけど……」
「ッ!!」
相思相愛ってこと?
ショルの誘拐なんかじゃないんだ。
これは……。
自分たちが口を出すようなことではなかったと言うことなのだ。
衝撃だった。
安齋を見る。
そしてショルを見て、保住を見る。
なんだかいたたまれなくなってこの場には到底留まれない。
蒼は安齋の腕を引く。
「い、行きましょう!安齋さん。おれたちが出る幕ではないんですよ」
「室長……田口は?田口はどうなるんです?あいつ。あんなに室長のことを慕って……」
「田口?田口は関係ないだろう」
「室長!?」
わたわたしている安齋。
それを引っ張って、蒼は公用車のところへと戻った。
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