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81.不幸は突然に4
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高塚は星音堂に居た。
会議室で打ち合わせをしていたところだったのだ。
メンバーはゼスプリコンクールを主催したゼスプリ市の職員、日本の企画会社のスタッフ、星音堂職員、各出演者のマネージャーである。
打ち合わせは揉めることなく、スムーズに終了した。
「この成功は星音堂にとっても名誉あることです。どうぞ宜しく」
最後に挨拶をした水野谷は上機嫌だった。
高塚もほっとした。
圭のマネージャーになって、いろいろな仕事はあるけど、こういった大掛かりな打ち合わせは初めてだ。
気軽に出てきたものの、内心は結構緊張していた。
終わってほっとしたのだ。
「お昼だし。どうぞ、昼食を食べて行ってください」
水野谷の声を合図に、職員たちがお寿司を持ってくる。
外国人たちは大喜びだ。
そして高塚も。
椅子に背を預け、だらっとしていると、ポッケの携帯が振動する。
「ん?」
ちょっと失礼と、断りを入れてから廊下に出る。
携帯を開くと圭からだった。
「なんだろう?」
珍しいことだ。
彼からの連絡なんて。
「もしもし?」
携帯に出ると、低い声が響く。
『悪い。高塚』
「へ?どうしたの?圭くん?」
『ちょっと……問題が発生した』
「ええ!?問題って?なに?」
『……』
電話では埒が明かない。
高塚は慌てて会議室に戻ると水野谷に挨拶をする。
「すみません。ちょっと、急用が出来たので失礼します」
「お寿司は?」
「すみません。結構です」
お茶を入れながら、その話を聞いていた尾形は嬉しそうにしている。
高塚の分は自分のものだと言うところだろう。
「分かりました。急用なら仕方ない。また次の機会にでも」
「ええ。申し訳ありません」
なんだか異様な感じがして嫌だった。
胸騒ぎがするのはどうしてなんだろう?
会議室を飛び出し、玄関に向かう。
途中、蒼に逢った。
「高塚くん?お寿司は?」
「あ、蒼ちゃん」
「どうしたの?血相変えて?」
「えっと……。いえ。なんでもないんです。ちょっと急用が出来ただけです。すみません。また夜に」
「うん……」
蒼は釈然としない顔のまま彼を見送る。
事情が分からない今。
蒼にまで無用な心配をかけることは出来ない。
高塚は黙って星音堂を後にした。
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