アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
83.ガラコンサート5
-
『圭!お前、なにをサボっている!さっさとリハーサルに来ないと……』
大声で騒いでいるショルは言葉をとめる。
「ち、面倒だな」
圭は大きくため息を吐く。
『なんなんだ!どういうことだ?これは!?』
真っ赤になっている包帯。
圭の左腕。
ショルにとったら大騒ぎのネタだ。
『圭!!』
『うるさいな!騒ぐなよ』
『だって……!お前!プロとして風上にも置けないヤツだな!!』
『知っている!!』
改めて言われなくても知っている。
『確かに。プロ失格だ。だけど、今日だけはなんとかしないといけないんだよ』
包帯を巻き終えた蒼と高塚は黙って二人を交互に見ている。
『このバカ!!』
『なんでお前にバカ呼ばわりされないといけないんだよ!』
むっとして圭は怒る。
『バカはバカだろう!どうしてそういう大切なことをコンダクターのおれに言わない?お前がそうなら、それなりの調整をしなければいけないだろうが!』
『は?』
『演奏前に怪我をするなど言語道断のことだが、スタンドプレーをしようとするのは持って他だ!』
確かに。
ショルには言わないつもりだった。
しかし、どうせ午後の練習ではバレるんだろうと思っていたし、その時はその時で言うつもりだった。
だから、そんなに言われる筋合いはない。
圭はそう思う。
だけど、彼は彼でやはり秘密にされたことは面白くないらしい。
いつまでも怒っている。
『関口もそうだ!体調が悪いときも隠して、平気な顔をしてステージに立つ。そんなのおかしいだろう?おれたちだって人間なんだ。全て万全で挑めるなんて神様みたいなことが出来るはずがないのだ!』
関口?
圭一郎のことであろう。
『お前たちは、やはり親子だ!いや!日本人はみんなそうだ!黙って無理をするのが美徳だと勘違いしている!』
『ショル。お前』
『おれはお前との音楽を楽しみにしてきたのに。隠し事をされていたのではフェアじゃないだろう?おれのことを嫌っているのはよく知っている。だけど、音楽を作る場面だけは信頼してもらいたい』
『信頼しているじゃないか』
まったく。
妙に暑苦しい男だ。
笑ってしまう。
『なに?』
『お前のこと。音楽の部分だけはすごく信頼している。お前の音楽に対する姿勢は尊敬すらする。今日、やろうと思えたのも、お前とだからってこともある。頼むよ。マエストロ』
『圭……』
ショルは感激しているみたいで、嬉しそうに圭を抱き締める。
『圭~!!』
『イタタタ!!おい!腕、腕~~!!』
『ショル!』
側で見ていた、蒼と高塚もじんわり感動していたのに。
圭の叫び声に慌てて止めに入る。
しかし、ショルに届くはずもなく。
彼はぎゅうぎゅうと圭を抱き締めていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
629 / 869