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85.主夫の1日2
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で。
ここからが朝の大仕事。
圭はエプロンのまま、寝室に向かう。
食事を終えて、毛づくろいをしていたけだもが後を追う。
カーテンを開くと、朝陽が入って寝室は一気に明るくなる。
「う~ん」
布団を被ろうとしている蒼。
それを阻止すべく、圭は布団を反対側から引っ張る。
「蒼!ほら!朝だよ!!遅刻しちゃうよ!!」
朝の一大イベント。
最近。
圭との生活に慣れきっているせいか。
蒼は自分で起きると言うことができなくなっている。
人間とは楽なほうに楽なほうに行くものである。
一人暮らしが長かったせいで、一人で起きる習慣がついていた蒼だったのに。
最近では圭に起こしてもらえると言う安心感を覚えてしまったのか。
二度寝、三度寝は当たり前になりつつあるのだ。
「もうちょっと……。まだ間に合うもん……」
「間に合わないよ!もう八時だよ!」
「嘘だよぉ。圭はいっつもそう言うもん」
むにゃむにゃしながら蒼は寝返りを打つ。
まったく。
こうなったら仕方がない。
最終手段だ。
圭は足元で自分を見上げているけだもを掴まえて、蒼の上に放り投げる。
「うにゃ!!」
「げふッ!!」
けだもは叫びを上げて逃げていく。
突然のことにビックリして蒼の顔を引掻いたらしい。
「イテテテ……」
彼は頬を押さえて起き上がる。
「ひどいよ……圭」
「だって、蒼が悪いんだからね。ちっとも起きないんだから」
「でも……」
「ほら。起きてご飯だよ」
しぶしぶ起きだす蒼。
少し気の毒だけど仕方がない。
ああでもしないと、本当に7時30分過ぎまで寝ているんだから。
まだまだオネムの蒼との朝食。
すっかり頭も冴えている圭はご満悦だが……。
蒼はぼんやりしたまま朝食を摂る。
さっさと彼を着替えさせて、送り出す。
昨日だって、9時を過ぎると、うとうと始まって。
結局は10時ごろには夢の中だったクセに。
どうしてこんなに眠いのだろう?
圭には不思議で仕方がない。
彼にとったら、睡眠時間はそんなに重要でもない。
むしろ、削ってしまっても構わないものと言うくらいの話だ。
蒼が「食べる」「寝る」を優先させると言うところが圭には未だに理解できない部分であった。
しかし、価値観は合わせなくともなんとか出来るものである。
蒼は蒼。
圭は圭。
お互いがお互いの価値観を持ちつつ、尊重して上げられればいいのかもしれない。
蒼のそういうところは自分とは違うとは思いつつも合わせようとは思わない。
だからと言って尊重してあげないわけでもない。
そのくらいがちょうどいいのだろう。
蒼がぼけっとしたまま出勤していくのを見送ってから、圭は後片付けをする。
主夫とは忙しいものだ。
朝食の片付け。
洗濯に取り掛かって。
そうそう。
しばらく掃除もしていなかったから、掃除機を取り出す。
これが出てくると、けだもは寝室に避難だ。
うるさくて嫌いみたい。
愉快そうに彼を見つつ、掃除機をかける。
その間に今日の予定を考えた。
今日しなければならないことは買い物だ。
それから、元気になってきたし。
廃品回収のときにお世話になった梅津さんのところに挨拶に行かないと。
そうそう、お菓子を持って星音堂にも。
結構忙しい。
あいている時間には桜のところにも行かなくちゃ行けないし。
「主夫って忙しいんだな。けだも」
掃除機を切っていたので、様子を見に来たけだもに声をかける。
彼は廊下からじっと圭を見ていたが、掃除機を確認すると、さっと逃げて行った。
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