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91.家族に病人がいるということ1
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圭の復帰は心配していたよりもあっさりしたものだった。
自分で自分の体調をセーブし、復帰後の仕事を抑えていたのもスムーズに復帰できる要因になったかも知れない。
少しずつ忙しくなった圭。
なんだかんだいっても、自宅内のことをやっていてもらった蒼にとったら、彼の復帰は忙しい日々を取り戻すきっかけになっていた。
「どいて、どいてー」
毎朝のことだが。
圭は笑ってしまう。
蒼は自分の準備が追いつかずにばたばたと廊下を走り回っている。
その足元で邪魔をしているのがけだもだ。
彼は、朝仕事に出て行ってしまう蒼に甘えたい様子だ。
だけど、そんなことを構っていたら遅刻してしまう。
下に人が入ったといっても、蒼はぺーぺーには違いない。
寝癖いっぱいのまま、ネクタイを適当に締めて居間に飛び込んでくる。
「落ち着いて食べなよ。急いでもそんなに変わりないでしょう?」
今日は午後から東京行き。
夜はあっちでお泊りだ。
「でも……」
圭としては、今晩お別れだから、少しゆっくり蒼の顔を見ていたかったのだが……。
「ごめん。圭。気をつけて。おれ、行ってきます!」
蒼はパンを頬張ってから、バタバタと出て行ってしまった。
残された圭とけだもは顔を見合わせてため息だ。
「まったく。おれたちの気持ち、一つも分かってないよな。蒼は……」
けだもの頭を撫でると、彼は短く「にゃん」と鳴いた。
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