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99.訣別8
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後部座席で小さく座っている蒼を、ルームミラーで見て岩見はため息を吐く。
羽根田の側にいると、いろいろ嫌な仕事も多い。
だけど、本当にこういう仕事は辛い。
やりたくない仕事の一つだった。
「大丈夫?」
羽根田の声が静かに響く。
大丈夫な訳がないだろう。
岩見はそう思う。
蒼は自分の手を自分の手で握り締め、そして小さく震えている。
泣いている証拠だ。
「……」
羽根田も躊躇しているようだった。
と、蒼が声を上げる。
「……すみません。お世話になります」
こんな状況で、そういうことを言ってくるなんて。
向かないだろう。
このビジネスの世界。
きっとつぶれてしまうと岩見は思った。
羽根田と血がつながっているだけで巻き込まれた蒼が不憫で仕方がない。
野心を持って、この業界に入ってくるならいいけど。
人生が変わってしまうかもしれないのだ。
うまくいけばいいけど。
「……」
羽根田は隣で泣いている蒼の手を見て、ふとつぶやく。
「その指輪は外してしまったほうがよさそうだね」
岩見はまっすぐに前を向いて走った。
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