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110.焦る気持ち2
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『圭!!久しぶりだな。なんだ、なんだ。最愛の人がいなくなって寂しくてやせ細っているのかと思ったが……』
人の不幸を嬉しそうに扱うのが、ショルである。
『悪かったね。元気で』
『そうではない。おれは心配してやっているのだぞ?』
心配しているような顔に見えるか!
圭はむっとする。
『圭!こっちにいるのに、ちっとも遊んでくれないんだから』
今度、やってきたのはピゼッティとブルーノ。
久しぶりの顔ぶれだ。
『お前たちも相変わらず引っ付いてんだな』
ショルはふむと鼻を鳴らす。
『悪かったね』
『ショルも元気そうだね』
ブルーノの笑顔はあったかい。
険悪になった雰囲気が和んだ。
この四人が集まるのはいつぶりだろう?
そんなことを考えていると、ほかのスタッフが続々と集まってくる。
今回は大がかりなイベントだ。
ショルだからこそできた?というところか。
そして。
バックについている。
『お忙しい中、ご側路いただきましてありがとうございます』
ホテルの一室。
と言っても、ここは会議室だ。
荷物を置いて、各々会話している声を割って入ってくる女性の声。
圭は顔を上げてびっくりする。
見たことある女性。
日本人。
『今回、我々、羽根田グループが皆様の演奏会を滞りなく勧められますように、バックアップさせていただきます。出演者の皆様が最善の状態で演奏ができますように。なんなりとお申し付けくださいね』
羽根田。
羽根田。
圭はドキドキする。
羽根田って。
蒼は!?
蒼はどこ?
『申し遅れました。私、羽根田グループ文化部門ヨーロッパ支部サブチーフの奥川と申します』
圭の問いかけを無視するかのように、奥川は自分の自己紹介をする。
ショルは『美人だ』と嬉しそう。
そういう問題ではない。
『チーフは所要でこの件には関われませんが、私どもで誠心誠意をもちまして取り組ませていただきます』
関わらないって……。
そうだよね。
そう甘くないよね。
圭は肩を落とした。
落胆。
隣にいた高塚も不憫そうな顔をする。
もう少しっていうところで、蒼はいなくなる。
羽根田の人間と接触できても、そう簡単にはいかないのか。
ぼんやりしている間に、出演者の紹介が始まる。
なんだか一人で興奮したり、がっかりしたり、圭は疲れを感じていた。
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