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110.焦る気持ち6
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『おいおい。圭!かっこよかったぜ!』
レオーネに背中をバシバシ叩かれて、圭は言葉を濁す。
かっこいいわけないだろう!
恥ずかしすぎる。
プライドが高い圭が、あんなことをするなんて。
自分でも訳が分からないのに。
『かっこ悪すぎだよ』
『そんなことないって』
レオーネはうんうんとブルーノと頷く。
『なんだ。おれも見たかったなー』
その場にいなかったショルティは悔しそうだ。
『プライドの高い圭が頭を下げるなんてよっぽどだろう?』
『でも、それだけ蒼のことを思っているんだろう?おれは感激したぜ』
勝手なことを言ってもらっては困る。
だけど、やってしまったことだ。
もう仕方がない。
圭は大きくため息を吐いた。
高塚は苦笑して、圭を優しく見ていた。
「圭くん。おれもかっこよかったと思うよ」
「高塚」
「おれはいいと思う」
そう言われても。
なんだか気恥ずかしい気持ちでいっぱい。
でも、仕方ない。
だって、あの機会を逃したら。
奥川に蒼のことを話す機会がなかったのではないかと思ったから。
我慢できなかった。
切羽詰っているのだろう。
1年になる。
心が疲れていないと言ったらウソになってしまう。
自分では気づかないふりをしてきたけれど、結構、限界なのかもしれない。
『蒼の件は、おれも気にかけてはいるけど、ここ1年。彼の名前すら聞いたことがないよ』
ショルティは圭を見る。
『ショル』
『お前の隣にはあの、お日様みたいな子がいないと恰好がつかないだろう?』
『そうそう。圭一人ではまるっきしダメだ』
レオーネも同調する。
いつもは意見が合わない二人なのに。
『大変だけど。自分で切り開くしかないんだろう。この試練』
ショルティの言う通り。
それは分かっているけど……。
どうしたらいいのかさっぱりわからない。
黙っていたブルーノが口を開いた。
『でも、蒼も、きっと。圭が一生懸命になって自分のことを思ってくれているってことを知っていると思う。自分ではどうしようもできない大きな運命って言うのはあるけれど。あがいてみると、きっとチャンスがくるんじゃないの?』
『それはそうだ。神様はおれたちのことを見ている。神は時に残酷なこともある。だけど、愛し合う二人を分かつようなことをいつまでもしておくはずがないさ』
日本人が口にしたら、なんとなく気恥ずかしい内容の話だが。
ショルティが言うと、それらしく聞こえてしまうのが不思議だ。
『おれたちはお前の味方だ。大丈夫。頑張れよ。圭』
レオーネはいつになく、真面目な視線を圭に向けてくる。
みんなが心配してくれていることは重々承知だった。
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