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魔界とはなんぞや
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勇はチンピラたちに暴行されて、あちこち怪我をしているが、足はそれほど重症ではないので、何とか自分の力で歩けそうだ。
しかし、チンピラたちが応援を呼んで、またこちらに向かってくるかもしれないからということで、レオが勇を担ぎ、最速で勇のマンションに向かうことにした。
レオが大の大人を軽々担ぎ、息切れすることなくかなりのスピードで走るので、勇は後ろで呆然としてしまう。
「着いたら色々話すから、今は体力を温存するためにも声を出さずにゆっくり休んで!」
そんな頼もしいレオの声を聞いて、チンピラたちからレオ守ろうとしたのに、逆に少年であるレオに助けられた自分が情けなくなってきた。
そのままマンションまで沈黙した勇だったが、直に感じるレオの小さな背中のぬくもりと、髪のほのかな甘い香りが妙に落ちつく。
マンションについて、レオは勇の傷を手当てした。幸い、勇が万一のためにと常備していた傷薬や消毒液が薬箱にしっかり入っていた。
「ちょっとヒリッとするけど、我慢してね。」
レオがそう言うと顔をぐっと近づけ、勇の頬に薬を塗った。
間近で見るレオの美しい顔にドキドキする。良い香りもする。勇は顔を真っ赤にして目を回した。
「勇!大丈夫!? もしかして熱ある!?」
「いや、その…レオがあまりにもかわいいからそんなに顔近づけられるとつい……。」
勇がそう言うと、レオはクスっと笑いながら言った。
「へんなの(笑) ぼくは男だって言ってるのに。でも早く治してもらいたいし、今は我慢して?」
勇は引き続き怪我の手当てをレオにしてもらい、一通り治療が終わったところで、繁華街での出来事について聞いてみた。
「ところでレオ、さっきなんであんな危険な奴らに追われてたんだ? それに、あいつらを蹴散らした時の人間離れした動きや、火をつける技は一体……。」
レオはまず追われていた理由から話始めた。どうやら、駅裏の人気のない場所で、行く宛もお金もないのでこの先どうしようか悩んでいたところ、さっきの男逹が話しかけてきたらしい。
「ナンパか何かか?」
「うーん……。当分の宿泊と食事はなんとかしてあげるからって、路地裏の小さなビルの中に入れられたんだ。そしたら、服を脱ぐように言われてさ。拒否したら無理矢理脱がそうとするやつがいて、反射的に突き飛ばしたら怒っちゃって……。」
「それで、逃げてた途中に俺と鉢合わせたって分けか。」
レオは見た目が女の子のように見えるのが仇となり、裏社会に出回るマニア向けの被写体にされそうになったようだ。
そしてレオは次に、身体能力が高いのと火を操ることができるのは魔界から来た証拠であり、その魔界とは何かを簡単に説明した。
この世界は有史以前、普通の人間と特殊な力を持つ人間がいた。
時代を経ていくと、普通の人間の数が圧倒するようになり、能力で支配者層にいた特殊な力のある人間逹はその座を奪われた。
彼らは魔族と呼ばれるようになり、人間とは区別され、各地に少数で集まり暮らすようになった。
やがて人間の世界は国ごとに分かれ、互いに争う時代が来ると、世界の国々がこぞって魔族の力を借りようとした。
魔族も協力すれば各国で人間と対等な扱いを受けることができるため、積極的に参戦した。
しかし、魔族の力を借りた人間は、人類滅亡寸前まで戦い続けてしまった。元々少数であった魔族もさらに少なくなってしまった。
人間は魔族の力は危険視するようになり、この世から魔族を抹消しようと企むが、この事態を予想していた魔族たちは連合して、最大の魔力を発動して別次元を作りあげた。
その別次元に全魔族が逃げ込み、人間界と完全に離別した。その別次元を魔界と呼び、新しい世界を築きあげた。
魔界も時代が経つにつれ、主義主張が異なるものが対立し、幾つかの国に分かれた。
ちなみに人間は魔界に行くことはできないが、魔族は人間界に行くことができる。しかし、魔界と人間界を繋ぐ道を作るには特殊な魔力が必要のため、各々国家の管轄業務となっている。
人間界への道を作る主な目的は、人間界の文物を学ぶための調査員を送るためと、魔界の国々にとって危険な政治犯などが2度と戻れないように人間界へ追放するためである。
レオは以上の魔界についての簡単な概要を勇に話した。勇は現実離れした話についていけなくて、ポカンとしてしまった。
「ごめんね勇。やっぱワケわかんないこと言ってるように聞こえるよね。でも本当の話なんだ。」
「にわかには信じられないけど、今の俺はレオが嘘を言っていると思わない。レオの眼は真実を語っていると俺は確信しているよ。」
「えっ……本当? でもなんでそう思うの?」
「レオが時々見せる悲しげな表情……昔の俺に似てるなって」
勇はレオに自分の生い立ちを話した。幼くして両親と離ればなれになったこと、父方の従妹に愛情を持って育てられ笑顔を取り戻したことを。
ほとんどの他人には話さない過去だが、レオには抵抗なく話すことができた。それほど勇はレオに自分と通ずるものがあるのを感じているようだ。
「だからレオ。俺は君の気持ちが分かるから、あのまま放っておくことができなかった。初めは疑ってごめんな。おばさんやおじさんが俺を笑顔にしてくれたように、今度は俺がレオの笑顔を取り戻す手助けがしたい。」
「勇……。ありがとう!」
レオは小さな体でおもいっきり勇に抱きついた。勇は照れくさそうにしながらもレオをぎゅっと抱きしめ、頭を撫でた。
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