アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
少年は魔界の元王子
-
レオが早めに治療してくれたおかげで、後はなるべく傷に触れないように安静にしていれば直ぐに治りそうだ。
「ところで、レオって今いくつなの?」
「ぼくは13歳だよ。勇は?」
「おれは今27歳。レオからしたらおじさんだと思われちゃうかな(笑) それにしても、レオはなぜそんな若いのに人間界に送られたの? あ、もし言いにくいことなら言わなくても大丈夫だからね。」
「ぼくは元々、一国の王子だったんだ。エナ国というそこそこ大きな国なんだけど、戦争が堪えなくてさ……。父の代で戦争は終わったけど、その後すぐに信頼していた宰相に国を乗っ取られてしまって……。」
エナ国は農地に適した土地が多く、それを狙う近隣諸国との争いが泥沼化し、戦争が100年ほど続いたそうだ。
近年和平が結ばれ、国に再び平穏が戻ったのは良いが、民間人や軍人、果ては諸侯に至るまで多大な犠牲が出たにも関わらず、恩給などの保障は皆無で、国民の大多数は貧しい生活を余儀なくされた。
国民への補償がない理由は、敵対していた国々との条約で、一部穀倉地帯を隣国に割譲したことや、戦争で田畑が荒れたことによる国の疲弊が原因だと言われている。
そこに戦争末期の頃から、野心家である当時の宰相が革命軍を密かに育成し、王国の転覆を図った。そして終戦から僅か2年後に王国の正規軍を打ち破り、新たに誕生したエナ共和国の総統となった。
王家であるレオやその家族たちは別荘地に移され、貧しい生活を余儀なくされた。
やがて流行り病により、王であった父と、妃だった母が亡くなった。その後、姉とレオの流刑が決まった。
流刑になった理由は、残された2人が再び王権に戻そうとする王党派の象徴になる可能性があったからだと言われている。
まず先に姉が流刑となったが、その流刑地が魔界の中なのか、人間界なのかレオには分からないそうだ。そして、姉の流刑から約1年後、レオも人間界に流された。
レオはこの一連の話を勇に話した。勇はさっきと違い、なるべく理解しようと真剣に話を聞いた。
「レオって王子様だったのか。そんな壮絶な過去があったとは……。まだ魔界については分からないことだらけだけど、辛い話をさせちゃってごめんな。」
「ううん。逆に聞いてもらえて楽になったよ。ぼくのことを信じてくれた勇だから……。それに、ぼくを助けるためにあんな大人数に立ち向かった勇のこと尊敬してるし。」
「えっ! 尊敬だなんてとても…。だっておれすごいカッコ悪かったじゃん。こんなにぼこぼこにされて、逆にレオに助けてもらって……。」
「勇はカッコ悪くなんかないよ! 自分を犠牲にしてこんな素性の分からない変なやつを助けてくれたんだもん。勇はぼくのナイトだよ。」
「レオ……。」
勇は僅か13歳の少年に助けられたことを情けなく思っていたが、まさか自分のつたない勇気を誉めてくれたので驚いた。
それにこんな可愛い王子様が自分のことをナイトだなんて言うものだから、こっぱずかしくて顔を赤らめた。
「勇、その……こんなぼくだけど、ちょっとの間だけでいいから、居候していいかな? 掃除や炊事一生懸命やるからお願いします…!」
レオは元王子と言えども、郊外での貧しい生活で家事を一通り身につけている。勇が居候させてくれるなら本気で自信を持ってやるつもりだ。
「もちろんだよレオ。放っておけないって言ったじゃん。好きなだけ居てくれていいよ。うん、そうだな…料理でもしてもらおうかな(笑)」
「ありがとう……。勇のために美味しい料理毎日作るね! ぼくの料理スキルで勇をぼくの虜にしてやるんだ♪」
さっきまでどこか悲しげな表情をしていたレオだったが、今は少し晴れやかな顔をしている。
心から喜びが溢れてくるようなレオの笑顔を見た勇は、思わず心を奪われそうになった。レオのような美少年には屈託のない無邪気な笑顔がよく似合うと感じた。
「明日からこんなにかわいい子と過ごすのか……おれ、色々我慢できるかな……。いやいやだからレオは男の子だって!……。」
勇はつい心の中ではしたないことを考えてしまった。確かにレオのような中性的で美しい美少年とこれから一緒に生活すると思うとドキドキするのも無理はないのだが……。
「そうだ、おれ明日まだ休みだから、レオの必要な日用品や服を買いに行こう。おれの怪我はレオが丁寧に手当てしてくれたおかげで明日にはかなり回復してると思うしさ。」
「何から何までありがとう勇! いつか絶対何倍してお礼するから…!」
「お礼なんていいよ。レオが元気でいてくれさえいれば。あ、今日確かレオ何も食べてないよね。お腹空いたろ? ラーメン作ってやるよ。」
「ラーメン?? どんな料理か分からないけど、勇が作ってくれるものならなんでも食べるよ!」
「そっか、魔界にラーメンなんて無さそうだもんな(笑) 今回食べるのは即席の簡単なやつだけど、なかなかうまいぞ!」
勇は台所のラックから袋麺を2つ取り出し、沸騰した湯の中にぶちこんだ。キッチンに立つ勇の後ろでワクワクしながら待つレオが愛くるしい。
「さぁ、できたぞ~!」
作ったラーメンは醤油味で、具は勇が適当な大きさに切った千住ネギと切らずに麺と一緒に茹でたウインナー4個だ。勇の定番の夕食メニューだ。
「これがラーメン……。良い匂い! スープに入った麺料理なんだね! いただきます! 」
箸の使い方を教えてもらったレオは、小さな口に一生懸命麺を運んでいる。そんな微笑ましい姿を見守る勇は心が温かくなった。
「勇は毎日こんな美味しいの食べてるの??」
「毎日ではないけど、簡単だから頻度はかなり多いな。でも、そのラーメンは美味しい代わりに栄養が偏っていてさ(笑)」
「その点は心配しないで! ぼくが明日から健康で美味しい料理を作るから。明日人間界にどんな料理があるのか詳しく教えて! 」
「うん、ありがとうな! レオが明日から作ってくれる料理楽しみだな~♪」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 30