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やっぱり放っておけない
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午後17時頃、勇は目を覚ました。今日はいつもより長めに昼寝をしてしまい、少し後悔する。
「あいつ、大丈夫かな……。」
勇は今朝出ていったレオのことがやはり気になるようだ。保護者が絶対いるはずだと思い、半ば忘れようとしていたが、両親がいないことを話していたレオの悲しみを交えたあの顔がどうも頭から離れない。
実は勇にも両親がいない。母親は勇が5歳の頃不倫相手と一緒に姿をくらまし、父親は9歳の頃病気で亡くしている。
その後は父方の叔母夫婦に預けらたが、度重なる不幸によるショックから勇は、大人を信用できなくなっていた。
さらに感情を自然に表現することも苦手になっており、なかなか叔母夫婦に心を開かなかった。
しかし、その叔母夫婦は子どもに恵まれなかったこともあり、勇をまるで我が子のように一心に育てた。
夫婦は、複雑な家庭環境で育った勇に多くの喜びと幸せに満ちた人生を歩んでほしいと心から願った。
勇が笑うようになったのは、10歳の誕生日を迎えた頃だった。叔母の手作りの大きなケーキや美味しそうな料理に目を丸くした。
さらに叔母夫婦からの温かい「おめでとう」の言葉に、勇の冷えきっていた心が温められた。
叔母夫婦の愛情により、勇の中に芽生えていた嬉しさや安堵感など様々な気持ちが入り交じった感情がどっと溢れ、涙を流した。
勇は今まで家族に誕生日を祝ってもらった経験がなかった。
母親は父が大企業からリストラされて以来、家族に興味を無くして浮気をしていたことや、父も新しい職場で毎晩遅くまで働いていたため勇を構う余裕がなかったためである。
勇は初めて祝福された10歳の誕生日後、自然に喜怒哀楽を表現することができるようになった。
レオのあの時見せた表情は、10歳以前の自分を彷彿させるものがあって、どうも他人事のように思えなくなってきた。
「レオを探しに行こう!」
いても立ってもいられない勇は外に飛び出した。
レオはあの身なりからしてお金も何も持っていないはずだから、交通機関は使えない。そんなに遠くには行っていないはずだと思った。
ただ、レオが出て行ってから既に7時間も経っていることや、どちらの方角に向かったのかも検討がつかないので簡単には見つからないだろうとも思った。
とりあえず人が多い駅の方に向かってみることにした。繁華街も駅周辺だし、レオもそちらに向かって誰かに助けを求めているかもしれない。
しかし、勇は駅周辺をくまなく探したが、まったく見つからない。歩行者にレオの特徴を伝えて見なかったか尋ねたりもしたが、手がかりは掴めなかった。
辺りはだんだん暗くなってきた。もうレオはこの付近にはいないだろうと思い、こうなったら1、2駅ぐらい進んで探してみようと考えた時──「待てコラァ!!」
路地裏からドスの効いた声が響いた。どうやらガラの悪そうな連中が数人、勇が歩いている道に向かってきているようだ。
「やれやれ、この辺りの治安はよくないな。巻き込まれないように離れよう。」
勇がそう思った時、小さな人影が路地裏から飛び出してきた。
「……レオ?…」
勇は一瞬にしか確認できなかったが、飛び出してきたのはレオだと確信した。
すぐに柄の悪そうな男3人も路地裏から出て来て、レオを追いかけた。
勇は状況が理解できなくて、一瞬固まってしまったがレオを見つけることはできた。
普段なら絶対関わることのないチンピラたち相手にどうすればいいか分からないが、勇はレオを必ず助けると心に決めていたので、必死に追いかけた。
レオを追いかけていたチンピラ風の男逹は初め3人ぐらいだったのに10人ほど増えて、レオを取り囲んだ。
建ち並ぶ夜のお店の人気が少ない路地裏の袋小路へ追いつめられたレオに、男が数人飛びかかろうとした瞬間──「やめろー!!!」
勇がレオを庇い男逹に全身全霊を込めてタックルを仕掛けた。
「お兄さん…? なんで!?」
「レオ! 何があったんだ!? なんでお前…ウゥッ」
「おぉ!? このヤロウが!!」
勇がレオに話しかけた隙に、男逹の内の1人が勇を掴み、顔面を強く殴った。
強烈な衝撃を感じた勇は地面に倒れ込み、男逹に袋叩きにされた。容赦のない暴力により勇は死を覚悟し、心の中で呟いた。
「あぁ……こんなとこで終わるのか……俺を本当の子どものように育ててくれた叔母さん叔父さんごめん……レオ……無事に逃げてくれ……あと欲を言えば彼女欲しかった……」
薄れゆく意識の中、勇はとんでもない光景を目撃する。
勇をタコ殴りにするチンピラ1人の肩をレオが背後から掴み、軽々放り投げて壁に激突させた。
男逹は一瞬何が起きたか理解できず固まったが、ヤるならこのガキからだと言わんばかりに一斉にレオめがけて襲った。
先頭の1人は、華麗な回し蹴りによりノックダウンし、側面に周り込んできた1人は、素早い強力なパンチを腹部に喰らい、その場に倒れた。
残りの男逹もレオに攻撃を仕掛けるが、軽々とかわされて地面に叩きつけらる。
数人よろよろと起き上がって、懲りずに飛びかかろうとした。レオが鋭い睨みを効かせた瞬間、男逹のお尻に火がつき悲鳴をあげてこの場から立ち去った。
「レオ、君は一体……。」
「お兄さん、いや…勇! ぼくを庇ってこんなに怪我を……。ひとまず安全なところに行こう!」
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