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気になる2人
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ゼルとの死闘から5日後、重傷だった勇とレオの体はナギの薬のおかげでかなり回復したようだ。
それでも二人共まだ外出するには早いので、部屋の中で安静に過ごしている。
「へっくしゅん!!」
勇は起床一発目にそこそこ大きなくしゃみを出した。
季節は夏であり、快適な部屋で治癒するために冷房をフル稼働していたが、体温の下がる朝では割と寒く感じる。
それが原因で風邪を引いてしまうという皮肉を勇は味わいたくない。
レオはまだ寝ているようだ。勇は起こしてあげようかと思ったが、あまりにも気持ち良さそうに寝ているので、まだしばらく寝させてあげることにする。
台所で眠気覚ましのコーヒーを入れようとした時、玄関のインターホンが鳴り響いた。
「はい、どちら様?」
勇がドアごしに訪ねると、か細い声で返事が返ってきた。
「……守屋です。お見舞いに来ました。」
相手がレオの同級生である守屋葉瑠だと分かると、玄関のドアを開けて部屋の中に案内した。
「いつもありがとう葉瑠くん。またこんなにたくさん果物やお菓子貰っちゃっていいの?」
葉瑠は少し照れながら、にこっと笑って言った。
「はい。大切なお友達であるレオさんや勇さんには早く元気になってもらいたいので。」
レオは魔界に関係する何かしらの問題が起きたら、すぐ葉瑠にも知らせるようにしている。
そして今回の事件を知った葉瑠は、1日置きの感覚で差し入れを持って様子を見に来てくれる。
勇はレオが大変な時こそ支えてくれる優しい友達を持てたことは、本当にありがたいことだとしみじみ感じた。
ナギにも新たな敵が周囲を常に警戒してもらっているし、こんなに頼もしい仲間たちがいればどんな敵にも立ち向かえるような気がした。
「あいつまだ寝ててさ。今起こすからね。」
「いえいえ、大丈夫です。せっかくのお休み中申し訳ないので、ぼくが来たことだけ伝えていただければ。」
「そう? でもせっかく来てくれたんだし、ちょっとゆっくりしていきなよ。コーヒーちょうど入れようとしてたんだ。一緒にどう?」
「え……あ、ありがとうございます! では、お言葉に甘えて……。」
葉瑠はレオと出会ってから、人との繋がりを大事にしたいと考えるようになり、チャンスがあれば積極的に多くの人々とコミュニケーションを取ることを心掛けている。
それに勇はレオの恋人であり、お互いに魔界についての話を共有する仲なので、恥ずかしがり屋の葉瑠にも話しやすい相手だ。そのため本人は非常に助かるようだ。
「2人とも傷の治りが早くて本当によかったです。」
「葉瑠くんやナギのおかげだよ。そういえば、葉瑠くんはまだナギと話したことなかったんだっけ?」
葉瑠は毎回お見舞いの帰りにマンションの入口近くでナギとすれ違うが、軽く会釈するだけで特に何も会話はないようだ。
「なかなか眼光の鋭い方なのでついつい萎縮してしまい……。レオさんの護衛兵でもあり幼なじみでもあるナギさんとは、ぜひ話してみたいのですが……。」
「ナギは見た目ほど怖いやつじゃないから大丈夫だよ。案外向こうも本当は話してみたいと思っているけど、毎回タイミングを逃してるだけかもよ?」
「そう……ですかね?」
そんな他愛もない会話をしているうちに、レオが目覚めた。
レオは葉瑠を見るやいなや、寝起きの顔を洗うため洗面所に向かった。
「ごめんね葉瑠くん。もう勇、葉瑠くんが来てるならすぐ起こしてよ。」
「いや、ぼくがそのまま寝させてあげてくださいと勇さんにお願いしたのです。あまりにも気持ち良さそうに寝てらっしゃったので。」
「なんだそうなの。気を使わせちゃってごめんね。」
「いえいえ、それにしても、またいつもの元気なレオさんに戻りつつあるのでぼくは嬉しいですよ。」
レオが起きてから3人は小一時間ほど話し込んだ。勇とレオはそろそろ帰ろうとする葉瑠を玄関まで見送った。
やはりどういう分けか今回も葉瑠はマンション出入口近くでナギとすれ違いそうになる。
葉瑠は今日こそとの思いで、勇気を出してすれ違い様に話しかけてみた。
「あ、あの……」
ナギは足を止めて振り返った。
「……? 君はえっと……」
「も、守屋……は、葉瑠です。今後ともよろしくお願いします! で、では!」
「お、おう……。おれには自己紹介させてくれないのか?」
「い、いえそんなっ! すいません失礼しました!」
葉瑠はナギの少し困った顔が怖く見えてしまい、思わず逃げるように勇の住むマンションを後にした。
「ちっ……。しまった。せっかく話せるチャンスだったのに。」
どうやら話してみたかったのは葉瑠だけでなくナギもだった様だ。
ナギは午前の周囲の安全確認を終えたことを伝えるために、勇の家に入った。
「あれ? 今葉瑠くんとすれ違わなかった?」
レオがそう訪ねると、ナギは少し照れながら答えた。
「あ、ああ……。さっき見たよ。」
次に勇が何か話したかと訪ねると、ナギは首を横に振った。
「あちゃ、今回もか。葉瑠くんナギと話してみたいって言っててさ。でもほら、あの子恥ずかしがり屋なとこあってなかなか自分から切り出せないみたいなんだ。」
「もしよかったらナギの方から……。」
そう勇がお願いするとナギは勇の言葉を遮るように言った。
「だ、ダメだ! それは!」
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