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剣士の本領②
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ゼルにナイフで後ろから一突きにされたナギは、多量の出血と痛みで今でも倒れそうだ。
その最中、葉瑠が神社の本殿の中から緑に輝く光を指を差して、まだ勝機はあるという。
「なんだ? あの光は…?」
「あの光は、我が社(やしろ)のご祭神である天剣(あまのつるぎ)のものです。剣を持つのに相応しい人物が現れると、翡翠色の光を放ち、手にするに相応しい人物を待つと云われていますが、本当の話だったのですね…。」
「なんでこのタイミングでその封印が解けたんだ?」
「それは…それはきっと、ぼくとナギさんの気持ちが一つになったからです。」
少し恥ずかしそうに話す葉瑠を見て、ナギの胸の鼓動が一瞬高鳴った。
「で、でも封印を解くにはア、アレをしなきゃいけないんだろ?」
ナギも葉瑠からこの神社の云われを聞いていたようだが、剣の封印を解く時に行う契約(うけい)の内容が、性的なものに疎いナギにとってかなりセンシティブなものであったようで、ナギからこの話をするのはかなり勇気のいることのようだ。
「ぼくもそう思っていました。でもおそらくこの社(やしろ)の神は、肉体的な繋がりで判断するのではなく、お互いが真剣に心と心で結びあっているかどうかで決めるのではないでしょうか…。」
「じゃぁ葉瑠…お前もおれの事を真剣に…?」
「……はい。」
ナギは葉瑠の思いを聞いたことにより、この場を必ず乗り越えてやると決心した。深手を負っているにも関わらず、グッと背筋を伸ばして立ち上がった。
「よし、葉瑠! すぐにゼルの奴をとっちめむてやるからな。その後、お互いの気持ちをはっきり伝えあおう。だから、絶対この場を乗り越えような!」
「ナギさん…。はい! 一緒に乗り越えましょう!」
二人は急いで本殿まで走り、その扉を開けた。光は扉から解き放たれ、一瞬神社境内全体を覆ったが、すぐに消えた。
二人が目を開けて本殿の中を見ると、刀身約80cm程の、銀色に輝く剣がナギの右手に握られていた。
「これが天剣(あまのつるぎ)……。御神体を見るのはおそらく僕の代が初めてです。ナギさんの手の中にあるということは、やはりナギさんが神様に認められたということです!」
ナギは魔界で様々な刀剣を扱ってきたが、この剣以上に自分自身と一体化するものは無いと感じた。そして剣から放出される魔力には怪我の治癒力や戦いの集中力を上げる効果があることもすぐに分かった。
ゼルに刺された箇所も、じんわりとした温かみを感じる。
「葉瑠、この剣から漲る魔力は、とても心地が良いよ。レオと勇、そして葉瑠をこの剣で守ってみせるよ。」
葉瑠は雄々しいナギの剣を持つ姿と、自分を守りたいというセリフに胸がときめいた。
「ナギさん、かっこいいです…。」
一方、ゼルはナギに斬られた傷を魔力で回復させながら遠くで様子をうかがっていた。
本殿に2人が入って、強烈な光が放たれたのを見たゼルは、何かの罠ではないかと疑い、すぐに攻撃を仕掛けるのをためらう。
しかし、いつまでもグズグズしているとまた逃げられると思ったゼルは、魔力で時間をかけて強化した大量の小さな鋭いナイフを絶え間なく屋根の上から打ち続けて、一気に葬り去ろうと考えた。
「何を企んでいるのか知らんが、こんな小屋に逃げ込んだのが運の尽きだな。喰らえ! これは避けきれんぞ!」
鋭いナイフの雨が本殿の屋根を綺麗に突き抜けて降り注ぐ。
ゼルはナギと葉瑠がこの攻撃で即死したと確信して、ニヤリとした。
死体を確認するため本殿入口を開けると、そこには攻撃に使ったすべてのナイフの刃先が折られた残骸だけが散らばっているだけで、誰もいなかった。
ゼルは慌てて後ろを振り向くと、剣を構えたナギがゼルを睨めつけていた。ナギの3歩ほど離れた後ろには葉瑠もいる。
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