アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
20
-
ふっと紫の強張りが解ける。数歩後退った同居人は、ジャージ姿の嶋を目撃して…急速に目元を緩める。
「…だらしない恰好。」
紫は、口元に拳をあて、くすくすと悪戯っ子のように笑う。嶋はぎり、と奥歯を噛みしめる。
(…畜生。何かコイツ…ズルい。)
今までαに寄って来ていたのは女子だったから、同い年の男に好意を向けられている可能性があるこの状況に、嶋はたじたじだ。
(そこら辺の野郎だったら、“タイプじゃない”とか“男はNG”って続けられるのに…。)
ちらっと紫を眺める。まだ肩を揺らして笑っている。控えめな笑い声。必要最低限の仕草。余裕たっぷりの笑み。小動物の如く、所在なさげに佇む姿。
(ああ、クソ…ッ。コイツ、一回だけでも項じゃないが喉仏辺りを噛み潰して、押し倒したい心境に駆られるっつか…。)
同じ男として、格下に扱われている気がして、この華奢で麗しい男に、妙に嗜虐心を煽られている。組み敷いて、滅茶苦茶に暴いてやりたい。服の裾に縋りついて、許して、と懇願されたい。
(アンタなんかにって、蔑む瞳に睨みきかされたい…。)
「…嶋??」
物静かに自分を呼ぶ声に、我に返ったαの青年は慌てる。目の前には、着替えを胸の前に抱く同居人が立っていた。
「僕、お風呂入ってくるね。…寂しがり屋だからって、昼間みたいに強引に誘わないでよ??」
「誘わねぇ~よ‼」
口角から唾を飛ばす勢いで噛みつくαに、くすくすと笑いながら紫はリビングの扉を閉める。そわそわする嶋は、少しでも心に平穏を取り戻そうとソファーに座り込む。…ややして、戻って来た紫が、ひょっこりと顔を出す。
「…いくらΩのことを知りたいからって、お風呂を覗かないでよね??」
「覗かねぇ~わッ‼」
手近にあったふかふかの正方形クッションを扉めがけて投げつける。扉向こうで、ふふっとそよ風みたいに笑って、小さな足音が遠ざかっていった。
「…ったく。」
頭をがさがさと掻きまわして、αの青年はやがてソファーに横たわり、突っ伏する。
鼻腔を擽るのは、ふんわりと香る、家主の体臭。
「…もうヤダァ~。」
甲高い声をあげ、嶋は半ば涙目になっていた。
数時間後。日付が変わる頃。二人は互いの部屋の前、廊下で別れた。αの青年は慣れない初めて続きに疲れた身体を引きずって、ベッドに潜り込む。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 146