アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
29
-
ぐっと身体を密着させると、紫が嫌々と頭を振る。
「ちょ…っ。嶋、近いって…。」
「いい匂いだな。今夜はカレー??」
嶋はわざと肩に顎を乗っけて、相手の耳元にそっと息を吹きかける。
「そ…っ、だけど…ッ」
「やった。…オレ、カレー好き。」
「ふぅん。…ってか、腕、放してよ。ついでに離れて。」
なんで、と呟きながら、腕に力を籠める。薄い身体。小さいのに、灼熱を感じさせるほど暖かな肉体。
「料理しにくい。」
「完成してんじゃん。」
「そういう問題じゃ…。」
ん??と面白がって続けようとして…嶋は口を半開きにする。
紫の、髪の隙間から垣間見えた耳たぶが、これでもかというほど赤く色づいていた。
(やっば…。)
嶋が急いで離すと、同居人はやれやれと肩を落とす。
「…嶋って、誰にでもそういうことすんの??」
「いや…。」
嶋は再び、相手の出方に困惑していた。自分に触れられると体では正直に喜ぶ癖に、口では遠ざけようとする。前にも、“番にはならない”宣言の前に“αはΩに惹かれるものだ”とも口にした。
(…今回ばかりは、こんなくっついているし押し倒されるかも、ってかまえたら…。)
兆しは全くなく、そればかりか離れると安心した素振りまで見せつけてくる。
(…Ωは面倒くさい説、間違いないんじゃ…。)
考えつつ、嶋は小皿を相手に差し出す。
「味見したい。…ほら、紫ちゃん。カレー一口、こっちに頂戴。」
「味見って、ねぇ…。」
何事か言いかけた紫だったが、すぐさま目を剥く。
「ちょっと待て。“紫ちゃん”って…何??」
「え~??」
嶋は勝手に同居人からおたまを引っ手繰って、小皿に一口注いだ。たちまち口に流し込んで、頷いてみせる。ピリリとしつつ、野菜の風味が活きている。想像通り、大変に美味だ。
「同居始めて、オレらもう一週間じゃん??いつまでも苗字呼び捨てじゃ素っ気ないっしょ??…だから、あだ名で呼ぼうと思って。」
「いや、そうじゃなくて。なんで、ちゃん付け??」
「ええ~…。」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
29 / 146