アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
30
-
嶋は小皿を鍋の手前に置くと、相手の片腕を引っ張って、やや強引に胸の前に抱き寄せる。色素の薄い髪を片腕で撫でつけつつ、にへらと微笑む。
「…紫ちゃん、かわいいじゃん。」
「~っ」
怒って、突き飛ばすか手を叩かれるかと覚悟していた嶋だったが、意外にも同居人は『ダメα…』とぼそぼそ文句を口にしつつ、されるがままになっていた…。
「紫ちゃん、皿こっち持ってきていい??」
「紫ちゃん、これ火ィ強くない??」
「紫ちゃん、台拭きどこぉ~??」
風呂掃除を終えた嶋だったが、“甘やかし絆しまくる作戦”のため、料理人の手伝いに精を出す。
「意外にも、今日はサービス精神旺盛だね。」
氷点下の紫に皮肉を言われても、相手はめげない。
「紫ちゃんのカレー、楽しみだからさ。…出来るだけ腹、空かせてぇの。」
「・ ・ ・そう。」
「今の間、何??」
怪しがる嶋に、同居人は大仰に肩を竦めてみせる。
「別に。…しいて言うなら、僕への呼び方が…。」
「“紫ちゃん”呼び、気に入ったの‼?」
「うっさいつってんの‼」
柄にもなく憤怒する相手に、嶋はケタケタと笑ってみせる。
「怒っている紫ちゃんも、めちゃくちゃかわいいよ。」
「~…っ」
黙って歯噛みし、睨みをきかせるしかない紫だった。
午後七時。二人して、手を合わせ食事に入る。
「紫ちゃん、福神漬け派??ラッキョウ派??」
「…二つがあるんなら、福神漬けかな。」
カレーをスプーンで掬って、口いっぱいに頬張りつつ、合間に嶋は喋る。
「ええ~。オレ、ラッキョウ派。福神漬けってさ。何ていうの??素材の美味しさも全部甘い味に吸収されちゃっている気がして…。」
「ああ…。確かに、それならラッキョウのがうまみが活きている気はするね。」
「じゃあ、お互い違う陣地っつーことで…。」
「待ってよ。僕はチーズ派だから。」
正面に座っていた嶋は、目を丸くする。
「えっ??チーズ??…チーズは隠し味っしょ。付け合わせじゃない。」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 146