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「まぁね。隠し味はチーズの他にもリンゴにハチミツ、調味料や餅なんかもあるらしいね。卵落とすのも美味しそうだけど。僕はやっぱり、溶けるタイプのスライスチーズを細かくちぎって食べるのが好き。」
「ん~…。でも、オレはやっぱし…。」
議論していると、あっという間に嶋が平らげる。紫が落ち着き払った様子で訊ねる。
「…ラッキョウ、今度出せるように漬けてみようか??でもあれ、どのくらいで出来るんだろ。」
「あ、いや。そこまでしてほしかったわけじゃ…。」
突如口を噤んだ嶋は、居ずまいを正して、相手に告げる。
「…なぁ、紫ちゃん。オレ、紫ちゃんの手伝いしていて、一つ思ったことがあんだけど。」
すぅっと息を吸って、嶋は続ける。
「料理って、すっげぇ手間かかんのな。オレはこのカレー、最初から見てなかったけど。これ、きちんと野菜の皮剥いて大きめに切って、ルー入れてじっくり煮込んでいる。」
手間だよな、と嶋はこぼす。
「…なのに、オレのために毎日料理を作ってくれる。」
なあ、と嶋は正面にいる同居人と目を合わせる。視線が絡み合う。冷めた瞳の奥に、燃え盛る暗い炎が嶋は見えた気がした。
「紫ちゃんは、オレのこと少なからず好きだと思う。」
ひゅっと、紫の喉から小さな息が漏れ聞こえた。
「…んで、オレも。」
絡み合う視線が、じっとどこかで焦げて一筋の煙があがった気配がした。
「紫ちゃんのことを好きになれる。…ううん、オレ、紫ちゃんをもっともっと知って、いっぱい好きになりたい。」
馬鹿がつきそうなド直球ストレート。でも、嶋が投げられる白球は、そのくらいしかなかった。相手はこくんと俯いて…次の瞬間には、にゅっと嶋に片腕を伸ばしていた。
むい、と片頬を人差し指と親指で摘ままれて、引っ張られる。
「ふぇ??」
嶋は目を点にする。相手は限界まで目を眇め、震えた声音を口にする。
「…嶋ったら。嘘ついちゃ、ダメなんだよ??」
唖然とする嶋を残して、同居人は椅子から立ち上がる。
「いけない。…薬、部屋から取ってくる。」
背中を向けて立ち去っていくΩに、嶋は何も言えず、立ち尽くすしかなかった…。
数時間後。寝る支度を整え、嶋は、夕食時の同居人の態度に不安を残しつつ、自室に戻る。
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