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「バッカじゃないの??」
冷たい視線と一声で、あっけなく一蹴される。うぐぐ、と歯を噛みしめて、嶋は再び挑みかかる。
「…そんなこと言っちゃって~。実は紫ちゃん、ビビッてできねぇんだろ??」
「はァ~??誰が怖がっているってェ~??」
かちん、と効果音が聞こえてくる気がした。立て続けに、追い打ちを食らわせる。
「紫ちゃんはさ~??オレが大ッ好きだからァ、オレからの“あ~ん”なんて気持ちが透けちゃうからできねぇんだろ??」
「はッ、これだから。下半身直情型のダメαは困るんだ。誰がアンタなんか…。」
「でも、現に出来ねぇんだろ、“あ~ん”。それなら、オレはこの話にゃ乗れねぇなぁ…。」
ばん、と机を叩いて、紫が気色ばむ。
「待てよ。誰ができないっつった??僕は野郎同士の“あ~ん”なんて、ちっとも怖くないぞ。」
ふんッ、と嶋は演技で肩を揺らしてみせる。…我ながら、とてつもなく恥ずかしかった。
「へぇ??なら、やってみろよ。ほれ、てめぇがちんたらしてっから、片腕痺れてきてんだよ。」
熱く語る一方で、内心では顔の前で片手をひらひらと左右に振っている。
(…いや、ないない。学年首席ほどのお方が、こんなチャチな挑発に乗るわけが…。)
軽薄な双眸に光が灯ったのは、大きく前屈みになったΩが目の前で横髪を耳にかけながら、箸先の卵焼きをぱくりと一口で丸呑みした直後だった。
嶋の目線の先に箸を掲げていたのが悪かった。最良のアングルで、嶋は相手の口腔を見てしまった。柔らかそうな、真っ赤な口中。一瞬だけだが、のどちんこまで丸見えになった。胸から腹にかけて、たゆんとたるんでいる癖に襟元の中身が全く見えがない体操服と相まって、何やら禁欲的な雰囲気が漂う。
「…んぅ。…もうちょっと味が濃いのが、嶋は好みだったかも。」
もごもごと口を動かしつつ、卵焼きを吟味する紫に対し、相手は机に突っ伏するしかない。
「…ねぇ、ちょっと嶋??今の、ちゃんと見ていた??」
「あ~、ハイ。オ疲レサマデシタ…。」
何故だか自分で仕掛けた罠に嵌り、誤爆する嶋だった…。
美味しいと頬張っていると、すぐさま紫の手製弁当は空になってしまった。絶品だったとあれこれ褒めまくる嶋に、同居人は半ば呆れた表情で自分の残りを譲ってくれた。
嶋の腹が膨れる頃には、グラウンドから絶えず聞こえていた部活生の声は、全くしなくなっていた。休憩か、あるいは今日の練習は午前だけなのかもしれない。
「…不思議。今日は教室が小さく見える。」
僕らいつもここですし詰めになって勉強してんだよね、と呟きながら、紫は自分の席に座る。嶋の席から、数人分遠い。嶋は相手を振り返りながら、しみじみ頷く。
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