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(いいや、オネダリされたら余計断りにくくなるに決まっている‼)
悶々と葛藤する嶋に、同級生はパッとポーカーフェイスを上げる。
「…連れていってくれないなら、一生このまんまだからね。」
「脅すんかいっ‼」
嶋の叫びが、部屋全体を揺るがせた…。
額に大粒の汗が滲む頃、二人はようやく最寄りのコンビニに行きついた。自動ドアを潜ると涼しい空気と店員の威勢のいい声がやってくる。
入店するやいなや、紫は手紙をポストに投函する。嶋は嶋で、彼と離れて店内を散策しだす。紫は興味なさげに雑誌コーナーを眺めていたが、同居人がアイスが置いてあるショーケースの前に佇んでいるといそいそと近寄ってきた。
「よし。…安いし、カリカリ君にしよ。」
嶋がショーケースを開けようとすると、隣に並んだ同居人が手を重ねてくる。
「ダメ。…嶋、カップルコにしよ。」
紫が選んだのは、二つのアイスが一塊で売ってある商品だ。このアイスは、一つで兄弟や恋人同士で半分こに出来るのが特徴である。
ええ、と嶋は不満そうに相手を見る。
「何でだよ。カップルコ、別に安くねぇじゃん。オレ、このフルーツ牛乳味、そんなに好きじゃねぇんだよ。」
「嶋の趣味とかどうでもいいし。僕も、見ていたらアイス食べたくなったんだもん。二人で一つにすれば、お得じゃん。」
「ワガママだな、お前…。」
そもそも、と紫は鼻を鳴らす。
「嶋は、家事は手伝ってくれるけど食費や光熱費持ちは僕なんだよ??たった一つのアイスくらい、リーズナブルなものを買いたいでしょう??」
「う…。」
嶋が怯んでいる隙に同居人はカップルコの袋を持って颯爽とレジに並んでしまった。
(紫の達者な口に勝てない…‼)
くうぅ…、と嶋は同居人の後ろ姿を見送りながら、静かに拳を震わせる。
店内の客足はまあまあといったところで、コンスタントに人が入れ替わっていく。母親と息子に娘、と思わしき親子連れ。商品棚を眺めながらあれこれ相談するシニア世代の、まったりとした夫婦。自動ドアを潜ると、レジの前に迷いなくやってきてタバコを頼む中年男性。…空調の整った、心地よい店内を眺めていると、そんな嶋に声がかかる。
「あっれ??嶋じゃん。偶然~‼…ってか、こんなところで何してんの??」
見れば、市川が漫画雑誌を手に嶋を呼んでいた。
「良太‼…お前も買い物??」
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