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「うっさいつってんの‼」
「…~ッ」
(誰のせいだと思ってんだよ‼)
大股で扉に歩み寄り、力任せに開く。そこには、目を丸くして佇む紫の姿があった。嶋が喋ろうとする前に、相手はキッと彼を睨みつけてくる。
「しッ、嶋が悩んでいるのって、どーせさっき会っていたβかαの女の子のことでしょ??色恋沙汰で騒音被害出さないでくれる??」
陰湿な絡み方は紫の通常営業だ。だが…嶋が引っかかりを覚えたのは、そこではない。
「…紫ちゃんさァ‼?」
相手の胸倉を掴み上げようと片腕を伸ばす嶋も、動揺を隠しきれない。
(…おかしい。)
(何で、“βかα”なんだ??)
(まず、選択肢からΩが除外されている。まあ普通、首輪をしていないΩが表をふらふら歩いているなんてわかるもんじゃないだろうが。次に、αであるオレに近いのは、同士であるαなはずだ。だから、紫ちゃんの正しい台詞は“αかβ”になるはずなのに。どうして…??)
途端、市川の声が聞こえた気がした。
『…お前、“あのこと”まだ気にしてんの??』
嶋は、きゅっと瞳を引き絞った。行き場を失った腕は自然と紫の胸元を漂い…やがて吸い込まれるように、指先が相手の頬の輪郭を繰り返しなぞった。
紫はむすっと不貞腐れた表情のままだ。拗ねた子供そっくりで…放っておけない雰囲気は発情期が終わった今でも健在らしい。
「…今夜、オレと一緒に寝る??」
投げやりな薄い色の瞳に、一筋の光明が見えた。
あの嬉々とした顔が記憶から一掃されるはずないのに、直後の紫は断固として事実を否定したがった。
「べッ、別に嬉しいわけないし‼明るくとかなってないし‼嶋の寝床一回入ったのだって、悪戯で寝起きドッキリを仕掛けようとしただけだし‼運悪く発情期を迎えちゃったけど…。」
(いや、多分だけど毎晩夜這いかけていたでしょ、紫ちゃん…。むしろ、そんな緩い物言いで逃げ切れるとでも思っているわけ??)
嶋は怪訝になるのをやめられないが、相手は正反対に舞い上がっている。
「僕にだってΩの自覚くらいあるし‼そう簡単にαの寝室なんて行かないから‼い、いや…。その、嶋が一人じゃ寂しくって眠れないなら…。どうしても僕が必要だって言うのなら??僕だって考えてやらないことも…。」
「…んじゃ、いいや。」
急速に面倒になり、くるりと踵を返す嶋の足首に同居人は泣く泣く縋りついてくる。
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