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『嶋の人生だかんね。嶋の好きに生きて、いいんだよ…。』
「…紫ちゃん、何考えているんだよ。」
冷蔵庫に手をかけて…嶋は腕を引っ込めた。
「…今から飯を食べるより、適当に軽い食い物を腹に詰めて、図書館までひとっ走りしてくるかな。」
他に誰もいないダイニングで、嶋はぽつんと呟く。
「紫ちゃんの真意が知りたい。」
身支度を整え、ロールパンを牛乳一杯で流し込んでから、嶋はマンションの階段を下って、エントランスへと出てきた。…そこに見知った顔を認め、嶋は足を止める。
「…理絵ちゃん。」
黒川は麗しいツインテールを靡かせて、嶋へと振り返る。
「嶋さん‼」
二人は互いに駆け寄った。
「…こんなところで、どうしたの??」
「嶋さんこそ。」
キョトンとしている黒川に、嶋は話し出す。
「あ~…。オレが同居人と暮らしているの、ここの一室で。」
なるほど、と黒川が相槌を打つ。
「私は…。このマンションの一室で、美容サロンを開いている場所があって。母が、そこに勤務しているんです。」
へぇ、と嶋は目を丸くする。ややあって、二度目の遭遇がマンション近くだったのを思い出す。
「…もしかして、昨日、オレと会った時も。」
黒川の顔がパッと明るくなった。
「そうです、そうです‼…あの時は、母がお仕事に必要な道具を家に忘れてしまって。急いで届けたら、今度は自分が首輪をつけ忘れていて…。」
あはは、と苦笑する黒川に嶋も微笑みかける。
「そうだったんだ…。大変だったね。」
「いえ、そんな…。」
刹那、ふんわりと嶋の鼻先を掠める匂いがあった。…黒川の髪から香る、薄く甘い人工の匂い。嶋は引き寄せられるかの如く、黒川の髪を一房手に取って、顔を近寄せた。
目と鼻の先に嶋が顔を寄せる。黒川は、吃驚して声も出ない。…一秒にも満たない時間で、嶋は顔を離した。
「…やっぱり、この匂いだ。」
嶋は、同居人のシャンプーを特定する。匂いに絶対的な自信なんてない。ただ、紫は何故かこのシャンプーを自分から隠そうとした…。嶋の瞳が、ぐっと狭められる。
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