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「…お、おそろい…。」
紫もこわごわと手を持ち上げる。ニッと笑って、片腕を伸ばした木津は紫の手にハイタッチした。音がやんだ後で、木津が目を丸くする。
「あれ…っ。紫さん、シロップついている。」
「えっ??どこどこ…??」
紫が指先を口元に持っていって探すが、なかなか当たらない。じれったくなったのか、木津が自身の持つ青いハンカチを取り出した。
「ちょっとじっとしていて…。」
木津のハンカチが、紫の口元にふんわりと押し当てられる。拭えたかな、と木津が顔を近寄せてくる。紫は、ぎくしゃくと瞳を伏せる。至近距離だからだろう。木津の吐息が紫の片頬にかかる。木津が歓声をあげる。
「わぁ~…‼紫さん、肌のキメすっごい細かいよ。石膏みたいに白くて…こういうのを美しいと表現するんだろうなぁ~…。」
顔を寄せたまま、木津はきょろっと黒目を上に動かす。αの上目遣いに眺められて、紫はそわそわする。
「ねぇ、紫さん以外のΩもみんなこんな風に肌が綺麗なの…??」
紫は、落ち着きなく瞳を泳がせる。どの角度から見ても、嶋に抱いてくれと強引に迫ったΩと同一人物とは思えない。
「…わっ、わかんな、い。性別のざっくりとした傾向はある、って話だけど…。」
「へぇ~…。」
目を輝かせた木津は、わきわきと指を蠢かせてみせる。紫はじりっと後退った。
「ちょっとだけ、撫でていい??あっ、触っていい??ツンツンしたら…。」
「ダメ‼」
紫の拒絶は早かった。木津は名残惜しそうに、紫から身を引いた。…二人のかき氷は、あっという間に空になっていった。
木津が席を立ち、紫の腕をくいくいと控えめに引っ張る。
「次、どこ行く~??金魚すくいとか輪投げとか…??」
「あ…。ちょっとトイレ。」
「オッケー。トイレ、近くにあったよね??じゃっ、ボクここにいるね。…トイレにいる物以外、ボクが荷物として預かっておくよ。」
こくり、と頷くと紫は黒い下駄を鳴らしながら、木津の傍から離れていく。木津は、紫の巾着袋を漁って携帯を取り出すと、ニヘェッと意地悪く笑ってみせた。
「さて、っと…。」
木津は携帯の画面に、『嶋智明』と書かれた連絡先のデータを呼び出す…。
廊下を進みながら、紫の母親は繰り返し振り向いて頭を下げた。
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