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「あっ、ありました。ありました。」
「え~??もう出なくちゃいけないのぉ~??」
物珍しげに辺りを見渡していた紫の母親は、ひぃんと悲しげにウソ泣きしてみせる。嶋はつい、先ほどの感想を口に出す。
「…何か、おばさん、紫とあんま似てないですね。」
(アレッ!?人ン家で、オレ何言ってんだ!?)
自分の発言に動揺する嶋をよそに、Ωの母親は身を捻ってみせた。
「そうよ~♪薫君は、父親似なの‼」
嶋は唐突に、Ωが言っていた家族構成を思い出す。
『母子家庭だよ。』
「はあ…。別れた旦那さんに、ですか。」
無神経かな、と思いつつ、正直他に思うところがなかった。言葉を選んだつもりが、紫の母親は真ん丸に見開かれた双眸を息子の同級生であるαに向けていた。嶋は咄嗟に、腰を落として両手を前に出す。
(何か、気分を悪くしたのか!?)
「…別れてないよ。」
紫の母親は、手元に視線を落として低く語った。
「へっ‼?」
場違いなほどに、嶋の口から裏返った声が出た。
「…薫君から、聞いてない??」
母親は頭を傾け、柔らかく…だがやや寂しげに微笑んでから、淡々と話し出す。
「薫君の父親は、薫君が小学生に上がる前に亡くなっちゃったの。病気でね。気づいた時は、手遅れだった。」
「そう、だったんですか…。」
(紫は母子家庭って答えただけだった。オレは勝手に、両親が別れたんだろうと思い込んでいた。)
嶋の家庭環境も、少なからず想像を補ったのだろう。仲のいい実の父母など、嶋にとっては現実的とは程遠い、理想の象徴でしかない。
「あの、辛い話をさせ…。」
謝ろうと口を開いた嶋に、Ωの母親はぐりんと首を向けた。おかげで、嶋はひっと息と共に謝罪の言葉を飲み込んでいた。
「でもねッ‼」
Ωの母親は、勢いよく駆け寄って来て、むぎゅうっと嶋の身体を抱きしめる。まさかの事態に硬直する嶋に、Ωの母親は誇らしげに話す。
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