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September .2
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実は俺は何故かこの気持ち悪いリズムに同族意識を感じていた。毎日365日飽きもせずに回し続けるこの動画に。…
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なぜなのか、といわれると恐らく後ろ指をさされながら4階にある教室の階段を登っていた中学生の自分が想起させられるからだった。
『気持ち悪いよな、…遠山って』
俺は人とコミニュケーションを取るのが死ぬほど苦手な中学生だった。死ぬほどと言うのだから一応当時は希死念慮もあったと思う。
人一倍単語を口にすることが苦手で、他人からしたら自分が口にした単語全て音声合成ソフトのように聞こえるらしいのだ。
緊張感に首を絞められながらやっとの思いでひねり出した言葉が普通の人間にとっては『気色悪い』らしい。
おまけに、思春期というのもあったのか感情の起伏も激しく、言葉にできないとウワッと泣き出してしまうような奴で、当然こんなことを繰り返している特異な自分をクラスメイトは敬遠した。
『気持ち悪いっていうかよくわかんないよなー…会話もまともに出来ないんだもん』
少人数教室に入ろうと戸に手をかけた時に、そんな言葉が耳に入る。
クラスの人間にヤバい奴と思われているのだろう、ということは簡単に予測がつくし思われても仕方がない。
でも、それをあえて口にせずに「大丈夫だよ」と
愛想笑いしてくれることが、俺にとっては唯一の希望だった。
予測がつくし仕方がなくても、真面目に心配してくれてる人間がどこかにいるんじゃないか、と愛想笑いを見て都合の良い妄想を当時は浮かべていた。
不確定な要素は人を惑わせることもあるが、時に希望を抱かせるときもある。
真実が残酷なものだとしても、その残酷さを目にしなければ、手でおおわれた視界の中で慈悲を勝手に見い出して妄想ができるから。
それを原力に俺はひたむきに学校に向かった。
俺はその暗闇から作り出した幻想の光たちを密かに信じていたのだ。
…しかし、現実は儚く残酷だ。小さな小言に引き寄せられて体は動かなくなる。
会話していたクラスメイトは、もう何事も無かったかのようにたわいのない話を続けて、それを扉越しに聞く。
ドアの隙間から漏れ出てきたグロテスクな真実たちが沼地のような粘り気を出して、茨のように俺の足にまとわりついて離れない。
足が、動かない。
…
ああ、どうやって人生を歩めばいい?
震える足元を見て、その一文が脳の中で滑り落ちる。正気に戻ってきた精神にだめだだめだ、と身体を現実に引き戻されて教室を後にした。クラスメイトが扉の窓ガラスから呆れたような目でこちらを見ていたのがわかった。
…
「…どしたの?何?急に黙りこくっちゃって」
耳に入ってきた声に気づいてテレビへと視線をやると、既に動画は終了していた。
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