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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
不審な訪問者1
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円卓の連合国がひとつ、金の王国、ギルディスティアフォンガルド王国。赤の王国の隣に位置するこの国の首都ギルドレッドでは、レンガ造りの趣深い建造物や出店が並び、実に多国籍の人々で溢れ返っている。それもその筈、この国は様々な土地から流れきた移民により作られた、新参の国家なのだ。しかし、その規模は円卓の中でも大きく、最大規模を誇る銀の王国に次ぐ程だった。
そんな首都の中心からは少し外れた一角に、こぢんまりとした店があった。中心地程の賑わいは見せないものの、それでも首都だ。人の通りは多く、立ち並ぶ店も人の出入りがそこそこ激しいようであった。しかし、どうにもその店は賑わっているようには見えない。理由は単純である。その店『水月』は、個人経営の刺青師の店だったのだ。
店の玄関を潜ってすぐの応接間を越えたところにある小部屋。畳張りのそこでは、敷かれた布団に横たわる客に、刺青師が刺青を施している最中だった。驚くべきは、その刺青師が十五歳ほどの子供であるところだろう。
客の背に丁寧に墨を刺す少年の額を、波うつようなくせ毛の黒髪が撫でる。少しばかり伸ばし過ぎと言える長さだ。前髪も長く、時折その視界を遮って作業の邪魔をしているのではないかと思えるほどだったが、少年が気にした様子はなかった。もともと視界が悪いことには慣れているのかもしれない。何故なら少年は、片目だったからだ。と言っても、片方の目が潰れているとかそういうことではなく、ただ単に右側の目が黒い眼帯で隠されているというだけの話だったが。
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