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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
不審な訪問者2
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「痛みは、大丈夫ですか?」
作業の手を止めずに少年がそう問う。幼い顔立ちに似合いの、少々高めの声だった。
「ああ、鏡哉くんは上手いからな。さすがに痛くない、とは言えないけど」
「それなら良いのですが」
少し笑みを含んだ言葉に対し、僅かばかりの嬉しさを滲ませて微笑んだその顔は、なるほどとても子供らしい。自分の仕事の腕を褒められたのが、嬉しかったのだろう。
その後も、時折世間話のようなものを交わすくらいで、二人の間にはこれといって目立った会話はなかった。そうして今日の分の彫りを済ませ、少年が一息つく。
「今日はここまでです。腫れが引いた頃に、また来てください。続きを彫りますので」
「ああ、ありがとよ。次もよろしくな」
起き上がって身支度を整えた客が、愛想良く笑いかける。そんな彼に若い店主は笑みを返したがしかし、先程見せた年相応のそれとは似ても似つかない、どことなく不自然さを感じさせるものだった。心からの笑顔というよりも、どこか人工めいた風な。例えるならば、そう、白熱電球の明りのような、白々と明るくあたたかみのない何か。
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