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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
不審な訪問者3
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しかし客の方は少年の表情に対し、特に目立った反応を示すことはなかった。本気で店主の微笑みに潜む違和に気づいていないのか、気づいてはいるが別段気にも留めないだけなのか。前者は勿論のこと、後者である可能性も大いにある。何故なら、鏡哉と呼ばれたこの少年がなんとなく気味が悪い造り物の笑みを浮かべるのは、いつものことだからだ。
造り物じみた笑みを貼りつけたまま、少年は小部屋のドアを開け、どうぞ、と言って客を通し、自分も部屋の外へ出た。そして、応接間で二言三言とりとめもない言葉を交わして、客を見送った。
取り敢えず、今日の予約分の仕事はこれで終わりだ。そろそろ夕方に差し掛かった頃なので、跳び込みさえなければ、店を閉める時間までのんびりと時を過ごすだけである。そして大体はそうなるものだったのだが、今日は違ったようだ。
不意に、カランカラン、という鈴の音が響いた。玄関の扉についている鈴の音だ。そしてそれは、玄関の扉が開いたこと、すなわち、新たな客人の訪れを意味する。
少年が扉の方へと視線をやれば、果たして、大柄な男がゆっくりと店内に入ってきたところだった。粗末な訳ではないが、決して高級でもない、比較的質素な服に身を包んだ男の身体は、服の上からでも鍛えられていることが伺えた。
店内を見回すようにしながら入って来た彼は、少年に気づくと、やけに人懐こい笑みを浮かべた。対する少年も、常の微笑みを顔に浮かべる。
「やあ、こんにちは」
「こんにちは」
立派な体躯からは想像しにくい、低くも優しい声だった。
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