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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入5
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浅い眠りを楽しんだ男は、自分が定めた時間きっかりに目を覚ました。そして、身を起こして大きく伸びをした後に立ち上がる。
裏カジノが開催されているのは、驚いたことに王都ギルドレッドの中でも王城により近い中心地の一角であるらしい。確かに当代のギルガルド国王はまだ年若いが、それにしても随分と舐めたことをする、と男は思った。
「さて、常日頃から私の運は非常に良い訳だが、今回もうまいこと場を乱してくれるだろうか……」
呟きつつ、外出の準備をする。と言っても持ち物が少ない身では、精々外套を着こむ程度だが。
準備とも言えない準備を整え、申し訳程度に置いてある汚れて曇った姿見で己の姿をまじまじと見た男は、ひとつ頷く。自分の目で見てもいまいち容姿が判然としないあたり、出立前に施して貰った魔法はまだ生きているようだ。
そのことに満足してから、男は宿を後にした。持ち物は特にない。行く場所が行く場所だけに武器の類などは持って行けないし、そもそも金さえあれば良いような所だ。
多少の人影はあるものの、日中と比べればすっかり落ち着いた街中を歩きながら、目的地を目指す。そうして辿り着いたのは、『黄金の鷹翼《きんのようよく》』という名のバーだった。別段特筆すべき特徴などはない、一般的なバーだ。アンティーク調の扉を開けて中へ入れば、適度に雰囲気のある空間が広がっていた。男以外に数人の客が会話を楽しんでいるそこには、古めかしすぎず、かと言って時代を感じさせない程に新しくもない、バーでよく見る等級の家具や調度品が並んでいる。その様は、店名に「黄金の」とある割には名前負けしているようにも思える。別段黄金らしさのない店内だが、金の国の名にあやかってつけられた名前なのかも知れない、と、普通の客ならば思うだろう。しかし、ぐるりと辺りを見回した男にはすぐに判った。ここには、目の肥えた者ならばかろうじて判る程度に巧妙に、高価な品が数点、隠すようにして飾られていたのだ。
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