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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入8
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恐らく、これこそが裏カジノへの招待なのだろう。やはり、思った通りである。国から隠れて運営している闇カジノである以上、第一に重要なのは気取られないことだ。故に、風の噂にカジノの存在を聞いただけの相手や目利きのできぬ素人などに対しては知らぬ存ぜぬを通し、それ以上は踏み込ませないのだろう。逆に男のように即座に隠された非日常に気づける相手ならば、顧客として申し分ない、ということである。それはつまり、このカジノ自体がかなり上級の貴族向けであることを示唆していた。
男が刺青屋で聞いた話では、このカジノは最近になって噂されるようになったものらしい。ということは、もしかするとかなり新しいカジノなのか。はたまたこれまでは表沙汰にならずにうまく隠れていたものが、何らかのトラブルで外部に漏れてしまったのか。その辺りも重要になるかもしれないのだが、現段階ではそこまでの判断はできない。だが、元々このカジノのことを話してくれたあの客自体、カジノの存在には半信半疑の様子だったのだ。情報自体が曖昧な中、男の目的に適うかもしれないカジノに辿り着けただけ上出来だろう。
そう考えつつ酒をゆっくりと味わった男は、空になったグラスをカウンターに置いて立ち上がった。
「馳走になった。支払いはいくらだろうか」
「ご招待には応じて頂けるので?」
「ああ、丁度暇を持て余していたところだしな」
「それではお支払いは結構でございます。我々の営む遊戯に興じて頂けることに感謝を込めて。ささやかな贈り物ということで」
優雅に一礼したバーテンダーを見て、男が首を小さく傾げる。
「良いのか? 金貨一枚はすると思っていたが」
「勿論ですとも。それでは、どうぞ今宵はお楽しみくださいませ」
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