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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入9
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優雅に一礼をして見せたバーテンにもう一度礼を言ってから、先程示された方へ向かい、従業員用と札の掛かった扉を潜る。すると、長い廊下の向こうに壁があることが窺えた。
なるほど、あれが例の壁か。となると、あそこでカードを差し込む部分を探せば良い訳だ。
しかし、それにしても随分用心深い。バーテンダーは何気ない顔で男と会話をしていたが、実はあの時、男以外には会話の一切を聞かれぬよう、その場に居た他の顧客には幻術の類をかけていたのだ。そして、男の見立てが正しければ、あれは魔法ではなく魔導の類だった。
リアンジュナイルにおいて魔導は異端である。この大陸で尊ばれるのは魔法であり、魔法があれば魔導は必要ないのだ。ただし魔法は生まれついた能力に大きく依存するものであるため、生まれつき魔法の才がない者も勿論いる。そんな人間のうち、それでも魔法に準ずる何がしかを成し遂げたい者は、魔術を学ぶのがこの土地における定石である。故に、リアンジュナイルで魔導を見ることはほとんどないと言って良い。
そもそも歴史的に見ると、リアンジュナイルには魔術すらも存在しなかったとされている。その理由は定かではないが、この地方で受け継がれている歴史とも伝承とも言える書を信じるのならば、こうである。
原初、全ての次元を統括する最高位の神、太陽神と月神は、この次元において神世と現世を繋ぐ門を設置した場所に、始まりの四大国、赤の国グランデル王国、青の国ミゼルティア王国、橙の国テニタグナータ王国、緑の国カスィーミレウ王国を生み出し、この四つの国をそれぞれの直属の配下に任せることにした。すなわち、太陽神直属の配下、火の神、地の神、月神直属の配下、水の神、風の神である。こうして、赤の国は火を、青の国は水を、橙の国は地を、緑の国は風を司る国家となった。これが、リアンジュナイルの始まりである。この後渡ってきた銀の国が先の四国を統括してリアンジュナイル大陸と成し、更に増えた移民により、最終的に現在の十二国にまで至った。このように、神により生まれた地であるが故に、この地方の人々は誰よりも精霊に愛されており、だからこそ、精霊の加護を必要とする魔法を扱える人間が多いのだ。
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