アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入12
-
急ごしらえの地下施設は、どうしても耐久の面で弱くなってしまうものだ。しかし、このカジノは敷地面積が広く、途中途中に支えとなるような柱もない。ではどうやって、このような柱を置かないぶち抜きの巨大な空間を造るかだが、可能性として考えられるのは、空間の転移だろうか。地霊の力を借りて大地を固定させた可能性もあるにはあるが、地霊は少々頑固者が多く、大地を大きく変動させた上にそれを長期間固定させるとなると、かなりの魔法の腕と魔力が必要となる。橙の国の王であれば容易にやってのけるだろうが、リアンジュナイル外の人間がそうそう真似できることではないだろう。故に、やはり空間転移の可能性が高い。実はここはバーの地下ではなく、どこか別の場所、なのかもしれない。扉は空間と空間を繋ぐゲートであり、潜った者を別の空間に飛ばす装置だとしたら、まあ納得はできる。それならば魔法を使えずとも魔導を駆使すれば可能だろうし、少なくとも、地霊を説得して穴掘り作業をするよりは現実的だ。
と、そこまで思考を巡らせたところで、男がひと息つく。
男の魔法や魔術や魔導に関する感知能力は、そこまで高くない。というか、どちらかと言うと鈍い方だ。よって、これ以上考えるのは無駄である。いくら考えたところで憶測の域を出ないし、今回の目的を考えるならば、ここがどういう空間であるかを知ることはあまり本質的ではない。いざというときに逃げられれば、まあそれで良いのだ。
さて、と呟いた男は、手始めにカード遊戯が行われている場所へ足を運んだ。遊戯自体は、合法である表カジノでも採用されている、よくある種類のものだ。“キングオブキングス”と呼ばれるそのゲームのルールは、いたって単純であり、見習い騎士、準騎士、騎士、騎士隊長、騎士団長、姫、王子、王妃、王獣、国王といった十階級のカードが、リアンジュナイルの十二の国の分だけ用意されていて、山札から得た五枚の手札を互いに見せ合い、強い役の方が勝ち、といったものである。手札は、一度だけ好きな枚数を捨てて山札からその枚数分引き直すことも可能だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
25 / 228