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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入13
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簡単なルールであることから、小さな子供の遊びにも使われることが多いが、実は役の数が非常に多く、また山札内のカードの配合はカジノによって異なってもいるため、単純ではあるが運に大きく左右されるゲームでもあった。それはつまり、勝ち続けることが困難なゲームであることを示唆し、同時に今の男にとって最も条件の良いゲームであることを示していた。
「失礼。私もひと勝負、良いだろうか?」
取りあえず、と手近にいた初老の男性(恐らくは貴族だろう)に声を掛ける。初老の男は、勝負に誘ってきた男が傭兵のような風貌であることに一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに微笑みを貼り付けて頷いた。
「これはこれは。まだお若いのにお盛んなことだ。ルールはお判りかな?」
「若いだけであれば、私よりも若い者も多く遊びに来ているでしょう。これでもカジノ通いは趣味でしてね。特にこのゲームはとても好みだ」
「ほう。では、楽しませて貰おうかね」
にっこりと微笑み、初老の男が席につく。やたらと豪奢な机を挟んで向き合う形で、男も毛皮張りの椅子に腰掛けた。すると、ディーラーが自然な動作でテーブルの上にカードの山を置く。山は四つ。厚みからして、全て合わせると百二十枚程度だろう。尤も、配合がどうなっているかは不明だが。
「ベットはどうなさいますか?」
「そちらのお若いのに任せるよ。いくらにするかね?」
「そうですね。……では、まずはこれくらいでいかがだろうか」
そう言い、男は懐からリンカネット金貨を五枚取り出して机に置いた。
「ほう、これは」
この大陸での金貨は非常に価値が高い。職にもよるが、ごく一般的な人間がひと月働いたとして、その収入は金貨二枚もあるかどうかだろう。それを五枚となると、この男、もしかすると手練れの傭兵なのかもしれない。と、相対している貴族を含む、周囲の人間は思った。
相手が男のベットと同じ枚数の金貨を机に乗せたところで、ゲームが開始する。ディーラーの合図に合わせ、二人は交互に好きな山からカードを手札に加えていった。五枚になったところで一度ストップがかかり、男は改めて自分の手札を見る。まあ、判っていたし予想していた結果だ。特に驚くこともない。
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