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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入15
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言いながら、今一度男が手札を五枚引いたところで、ディーラーによって山札が回収された。
「それでは、手札を公開してくださいませ」
ディーラーの指示に待ちきれないといった風にカードを机に置いたのは、初老の貴族の方だった。表になったその柄に、周囲がおおっとどよめく。
五枚のカードは、縁の色がバラバラで、男の最初の手札のように上位階級のカードが揃っている訳でもない。だが、一枚だけ、一際豪奢な縁取りのカードがあった。金箔によって複雑な模様を描く縁取りがなされたそれには、美しい男の姿が描かれている。
そう。これこそが、このゲームがカジノで好まれる所以である、最高の一枚。
相手が示したそれは、太陽神のカードであった。
そのカードが場に出たとき、“キングオブキングス”における番狂わせの特殊ルールが適応される。リアンジュナイルの神話では、太陽の神はありとあらゆる次元を統括する最高峰の神であり、何者も敵うことのない絶対的な存在だとされている。それ故に、このカードもまた、ありとあらゆる役を凌ぐ最高の一枚なのである。つまり、このカードが手札にあるだけで、相手がどのような役を持っていようとも勝ててしまうのだ。ルール上山札にたった一枚しか入らないカードではあるが、引き当ててさえしまえばこれほど強いカードもない。この時点で、ほとんど勝負は決まっていたようなものだったし、周囲の人間も勿論そう思い、男に同情の目や馬鹿にしたような視線を向けたのであったが、当の男はにっこりと微笑んで見せた。
「素晴らしい。太陽神のカードは久々に拝見した。お陰様で、私の勝ちです」
そう言って男が机に無造作に置いたカードを見て、周囲が先ほどよりも大きくどよめく。
出されたのは、初老の貴族が出したのと似通った、特に何の役もないようなバラバラの絵柄と色のカードである。だがその中の一枚だけ、毛色が異なっていた。
他のカードと違って縁取りがない、随分と質素なカードである。しかし、そこに描かれている美しい女性の絵は、このカードがこの場における逆転の一枚であることを示していた。
「月神のカード」
驚きを隠せないとった様子で呟いたのは、勝負の行方を見守っていたディーラーだった。
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